未来世界小話UP。
2014年 02月 03日
いちお悟飯さんはトランクスと付き合ってたりします。
文面は、未来さんの同級生視点一人称です。腐要素全然無くて申し訳ない…(平伏)。
たくさんのWeb拍手有難うございます!! ホント疲れが吹っ飛びましたっ♪
「あ、いたいたせんぱーい!」
憂鬱をこらえ仕方なく講義(単位さえ無ければ出ない)へと顔出した私は空腹でメルトダウン寸前のところでカモを見つけた。
とある大学の既視感シンドローム
両親曰わく私は事実上の『ゴクツブシ』だそうで、それは自身でも把握している、かなしーい性だ。今朝だって電子ジャー2台分の白いモノを体内吸収したってのに、なんなんですかこの音は!!
「またキミか…」
私を捉える冷たい目線をそのままに、箸を構える右手は常に目前の食糧を口へと運び、量にして軽く十数人は養えちゃうお昼ご飯(重箱二つ+ビニールはち切れんばかりの惣菜とカツ丼とチャーシューメン大盛り)をいそいそと食べ進める素敵な存在が待っていた。周囲からはかなり浮いているが、そこはもうみんな見ぬフリ。だって本人が控えめにこそこそ食べてるんだよ? くっそ、いじらしいぜ先輩っ。
私は期待感をこめつつ女子らしい笑みをたたえ、おねだりポーズを忘れない。
「あっ!! いいモン食べてるぅ先輩リッチだぁ~あのぅ少しでいいんで、端っこのチャーシューなぞ」
「俺だって金欠まっさかりのかなし~い学生なんですよ。大体キミはラーメン強奪と云う前科があるんだから。コレは一口だってあげませんあしからず」
「わ~ん先輩がいじめる! こないだキャラメルあげたのに恩忘れてる!! このヒトデナシ~」
「…どっちが恩知らずなんだか。あのね、俺はキミに何度も昼飯おごってます」
うぅ先輩非道。
優しそうな顔してるクセしてこのヒト絶対自分の意見曲げないからなぁ…結構怒るし、食らうしかなりの変わり者で我がサークルのマスコット的存在なこの人だが、何故か私の事を意識しているのだった!
だってよくこうして食堂でも外部(飲食店)でもアーケード街でもバッタリ会うし!! 都市人口にして約60万人分の確率だよコレどうよ本当に凄くない!?
おまけに先日はうんたら何かとお世話になったし。
「なに変な顔しているんだよ」
「いえ私のカオは気にせず、どうぞご自分のチャーシューメンと諸々を攻略なさってくださいな~。その間こっちは寂しいバランス栄養をリロードしてますから」
「…またカロリーメイトだけかウレナイ。そんなんじゃもたないだろ普通。それともなにか? ダイエットでも始めたんじゃないだろうな」
「ヒトの名前覚えるのは基本中の基本ですよぅ先輩。ちなみにコレはコンビニのクジで無料ゲットしたのでした! 只今私ことウレイナちゃんは25日まで金欠なので〜す♪」
「キミの事情など知るか。…じゃあアレに挑戦すれば? 安いし、キミなら楽勝だろ」
先輩が指さす先には我が学食が誇る伝説、バケツラーメンが提示されている。
このヒトは私の同学年に所属しているので、厳密に云うと立場は同等なワケだが歳4つは大きいカベなので馴れ馴れしく呼ぶワケにもいかず、あえて彼を『先輩』と呼ぶ人間が多い。歳上ってことは人生のセンパイなワケですからな!
それに、我が校始まって以来の偏差値と成績で入学した彼はなんと、学校に通った事が全く無いというのだ。ふわぁ今時そんな苦労人いるのかよしかもかなり歳くってるらしいよー的ウワサがたつ中、実物見て更に予想外。
どんなガリ勉さんかと思えば、なかなかイケるではないかヒャッホ~! などと内心喜ぶ女子達一同は密かに彼の身辺調査などに勤しんだのだが、まもなくソレは打ち切られる形となった。
・住所がチョー秘境
・母親や祖父との同居生活中
・バイト数件掛け持ちらしいとか
・趣味が地味(読書と山登り)
・ありえねーぐらいの大喰らい(それでもセーブしてるとか)
…と、ここまでは「それでもオッケー」と三分の二が残ったのだが、
『彼カノジョいるってさ』
ハイ全滅。
しかも噂によればセレブでかなりの美人とか…センパイ顔に似合わず恐ろしい子!
しかしそんなモノは序章に過ぎず、このところ私は所謂『王様の耳は』症候群に悩まされ寝ても覚めてもネットで色々調べちゃったり書き込みしたくなったりで大変だ。
「自力で空飛べる人間」なんてのは最早UMAじゃねぇの? と言いたい。
そもそも変なドラッグでもやったんじゃねぇの、と言われるのがオチだ。とてもじゃないが友人にも親にも相談出来ないよなー。
「チャレンジしないのか? …それとも食欲、無いとか」
「うわぁアップで見ないでくださいよぅビックリしたなぁ! あの本当にですね、私お金が無いんですマジで」
「まさかと思うけど、財布でも忘れたか?」
「半目で見ないでくださいぃ〜…」
じゃあ仕方ないな、と苦笑する先輩はなんと持参弁当の一部をアタッチメントのごとく取り外し、私へと授けてくれたのだった! ありえねぇうわぁ盆と正月一気にやってきたような奇跡に私の手は割り箸を掴み、素朴で栄養満点なおかず(コロッケが美味)を口に入れ咀嚼する。先輩はそんな私にヤカンの焙じ茶を注いで「落ち着いて食べなさい」と笑う。
…やっぱり私、先輩と、どっかで会った気がする。
でもそれ、思い出せないんですけど。
先輩は独特の雰囲気があって、顔に似合わず年寄り臭い。ていうか、同世代らしくないというのか。堂々と落ち着いていて貫禄を醸し出してるかと思えば、大勢の中では大人しく、目立たないように縮こまっている。
そのくせ、なんでも完璧にソツなくこなすのも先輩という人間のパーソナリティ。頭脳明晰は勿論の事、動きはなんだか女子っぽくて可愛い。どうしてだろうか割と良い身体(実家が田舎だから薪を割ったりしてるって聞いた)してるのに、みんなが食べた後のお皿とか片付けたり、奥でテーブルを拭いちゃってる姿がまた全員のツボつうか癒し系であり。
『ほら一旦手をつけたら全部食べなきゃ! …え? 残すなら俺が食べてあげるから!』
食べ物には神様が宿っているんだぞ、と本気で言える人はそうそういない。
サークルの飲み会で珍しくダウンした私が、やはり珍しく残してしまった焼肉の山(※私専用で約20人前はあっただろうか…)を、なんなくあっさりクリアした恐るべき漢、孫 悟飯。
そもそもあの日は厄日だった。あり得ない程酔いまくったし、吐きまくった。
全員が帰る中、仲良くしていた子たちも最初は心配そうにしてくれてたのに「ごめ〜んやっぱ帰らないとまずいし」でアッサリ帰ってしまい、気付けば部長と先輩がこっちを覗き込んで「どうしましょうか」とか言い合っていたのが耳鳴りと共に聞こえてきたワケで。
当初、部長のジェットカーで相乗り案も出たらしいが、酔って気分悪いのにクルマの匂い無理! な私をガシッと担ぎ上げて「俺、送ります」と言ってくれた親切な恩人。あれだけの肉食べて、しかも目立たないようにしてたけど、テーブルの品々ほぼ完食してた筈の彼は、私を『お嬢ダッコ』して全力疾走した挙げ句、人通りの少ない道まで運んだ後。
…飛んだのだ。しかも、空を。
そりゃ朦朧としてたし目を閉じてゲロ我慢してましたけど、ええよく憶えてますよ!?
げーなんだコリャこのヒト本当はサイボーグか新手の人造人間じゃないだろーなー、と薄目で真下のパノラマを見下ろしたら風の抵抗がハンパ無かった。そのお陰か後半はほぼ酔いも吐き気も治まって、代わりに先輩に詰め寄っていっそその正体を問いだしたいとも考えたが、私は目を閉じたまま眠ったフリで誤摩化した。…さりげなく自分の着てたダウンジャケットを私にかけてくれる辺りも完璧過ぎて、ある意味泣けた。ちくしょうああどうしてもう彼女がいるんスか先輩残念だぜ…。
…てのは、ほっといて。
ほんとにどっかで先輩のカオ、見た事あるんだけど。
第一あのカオの傷は独特だから見間違えようが無い。どこでそんなケガしたんですかー? と聞いたら「山でクマに襲われたんだよ」だってぬかしよるのだ。そんな訳ないじゃん、騙されるもんかぁ馬鹿にしてんな先輩。
確か、私が先輩らしき人を見たのは、まだ小さかった頃で。その時まだ学校とか行ってなかった筈だから5〜6歳ぐらいだったかと。でもそれもあやふやで曖昧だし、絶対ではない。
私はどこかのベンチに腰掛け白い息を吐き出して、お腹が空いた、と泣いていた。ハンパ無く身体が重くて辛くてだるい。親を待っていたのだと思う。
『どうしたの? なんで泣いているの?』
とても大きな男の人と少年が私に声をかけ、私は「お腹が空いた」と喚き散らした。二人はとても困ったカオをした後、ベンチの影に咲いていた白いコスモスを手折って差し出した。
あんまりにも小さな頃の、ぼやけた思い出だ。少年の方は今にして思えば、なかなかいやかなりの美形だった。男性は赤い服を着ていたのと、先輩と同じ黒髪で、先輩と同じ、額から左頬にかけて大きなキズがあり、なにより、左の腕が無かったのが印象的だった。
でも待て? …先輩、左腕、生えてるよね?
「う〜むむむ、おかしいです…」
「人から弁当もらって何言っているんだキミは。それ、ちゃんと味見して作ったぞ」
「はわぁビックリ! …いやいやいやこの白和えもコロッケも里芋の煮っころがしも、めたんこ美味でしたごちそうさま! てかコレ、先輩が制作されたのですかな?」
「…ほらうちは山奥だろ? 毎朝、母親を叩き起こすのは悪いから。自分で自分の弁当を用意するのぐらいは当然だろ。でも、毎回こんな事してやると思うなよウレイナ。俺だって貧乏なんだからね」
「んっふ〜! わ〜かっておりますともぉ♪」
「な、なんだよ…俺、ちゃんとキミの名前呼んだだろ…」
「いえいえいえご馳走さまマジで美味しかったです、これで午後の活動、元気にやり過ごせそうですぜ先輩っ。それじゃアッシは早速、部室にて活動準備をすべく立て篭ると致しますチィス!」
「…ノートは見せないからな」
迫力に欠ける童顔を精一杯駆使して「俺は知らんぞ」と重箱を片付ける先輩。いつもそうであるように、ネクタイとシャツにスラックスといった姿は、ラフな服装の学生連中の中でよく目立った。
「さぁて栄養チャージしたし、ウレイナちゃんは部室にて体力ゲージを満タンにしますかな?」
自分で料理出来て空飛べて年齢不詳のハイパー先輩の正体はさておいて。
大好きな味の余韻と懐かしい空気に酔いしれ、私は午後の部室のマイベッドで惰眠をとるべく鼻歌混じりで廊下を駆け抜けるのであった。
…でもやっぱ私どっかで先輩に会ってる筈なんだよなぁ。
それはいつの事だったのかは思い出せないんですけど。
END.
最近しめっぽい駄文が続いてたので明るくさっぱりしたくて、つい書いちゃいました(笑)。
考えてみたら悟飯さんの実年齢、すごい事になってる筈! 周囲の大学生みんなかなり歳下の筈だよ!?とかなんとか考えていたら出来たネタ。オリジナル要素中途半端に加わって反省。
空飛ぶ人間なんて普通いないよな…てか悟飯さん油断し過ぎだ(汗)。