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高宮あきと云う奴によるDBトラ飯ブログです。pixiv(9164777)もやってます♪主に女性向けなので、嫌悪感じる方はご遠慮下さい(汗)。


by synthetia

トラ飯駄文 その二

『きっと、あなたに』の第二話。取り敢えずこの辺りで一旦締めます♪
しつこーく載せ続けるかもしれませんが、間は空くと思いますよ!








「こんな時間にすまねぇだな。…悟飯は、来ているだか?」
 開口一番、牛魔王さんは用件を切り出してきた。
 …玄関には悟飯さんの履いてきたサンダルもある。オレの視線の先を読み取った来訪者の目も同じものを捉えていた。
 隠しても仕方がない。オレは首を縦に振り「ここで立ち話もなんですから」と、相手をリビングに通した。

「悟飯のやつは、無事だか?」
 こちらが出したコーヒーを一口飲み息をついた牛魔王さんにオレは「はい」と頷くと、彼の様子と本音に少し触れ、話をした。黙って話を聞いてくれた牛魔王さんは終始穏やかな顔をしてくれていたので有り難い。
「…きっとチチさんはとても心配なさっておいででしょうが、もう暫く、オレに悟飯さんを預けてみていただけませんか?」
 オレがそう申し出ると、温厚な老紳士———かつては村人を脅かし続けた巨躯の戦士———は初めて歯をむき「肉親でもねぇのに自惚れるでねぇ」と、憤怒を露にした。
「オラやチチが悟飯を心配し、愛する気持ちは、あかの他人のおめぇにぜってぇ負けねぇ。…それに、チチのやつが、悟飯の素振りや態度に気付かねぇとでも思っただか? あの子が、オラ達にどこか萎縮して怯えていたのも知っていただよ。あの子は…悟飯は、心のどっかでまだオラ達に対して他人行儀なとこがあって、いつもニコニコして、そんくせ遠慮ばっかりしててよぉ。出来ればあの子のそんな頑ななとこを、オラ達肉親がどうにかしてやりたかっただよ…」
 だども悟飯はおめぇを選んじまったからなぁ、そう言うと牛魔王さんはまた普段の穏やかな好々爺に戻り、オレの肩をバシバシ叩いてコーヒーを飲み干した。

「トランクスさ。どうか、どうか、うちの可愛いマゴを宜しく頼みますだ」

 がっはっは、と豪快に笑い立ち上がると、牛魔王さんは「ちょっと車に荷物置きっぱなしにしてあっから」と、外へ出た。ややあって、その巨大な両手に溢れんばかりのボストンバッグやキャリーバッグの中から、衣服やらノートパソコン、参考書にスマートフォン、筆記用具、アメニティ等の生活品一式を並べ出した。それらは全部、悟飯さんの物だった。
「チチの事はオラに任せるだ。…それにオラとしては、悟飯には目一杯ワガママしてもらって、自分のやりてぇ事さ、たんと消化させてやりてぇ。あの子は本当に、オラ達には勿体ないぐらい良い子で、いつも人の事さ考えてて自分の事は後回しでよぉ。その悟飯が、おめぇの傍にいてぇと願うなら、悟空さもいねぇ今、オラだけでも応援しなきゃなんねぇよ」
「牛魔王さん…」
 感極まったオレがソファーから立ち上がるより早く、リビングから廊下に繋がる扉からコトッ、と物音がした。
「…悟飯、そこにいるだか?」
 牛魔王さんの問いかけに返答は無い。
 だが、扉の向こうで『何か』が寄りかかる音がする。
「悟飯。じっちゃんや母ちゃんは大丈夫だから、おめぇは好きなだけトランクスさの傍にいるとええ。…おめぇは良い子だから、きっとすぐに神様が記憶を返して下さる。ただ、病気や怪我だけはしねぇよう気ぃ付けろ。もしなんかあったら、じっちゃんに電話するだ。すぐ、駆けつけてやるだよ」
 答えは返ってこない。
「…さて、そろそろオラは帰るべ。明日も仕事あるのに申し訳なかっただ」
 牛魔王さんは少し分厚い封筒をオレに手渡した。それは、悟飯さんの当面の生活費だ。いや大丈夫ですよ、と断ろうとすれば相手は「そりゃマゴへの小遣いだっぺ」と、力強くオレに押し付けた。 

 再び玄関前に立ち、巨大な身体を折り曲げて出ていこうとする牛魔王さんを見送り手を振っていると、背後から悟飯さんが駆け足でオレの横をすり抜け「おじいちゃん」と、叫んだ。
 手を振り遠離っていくその背中は———訪れた時よりとても逞しく見えた。









 第二話『きっと、よびさます』









 次の朝、いつもより少し早めに起きたオレはスーツを選び出社の準備を済ませてから洗顔をして、コーヒーメーカーに豆をセットし、プレーンオムレツとベーコン、カボチャのポタージュとサラダを二人前用意した。
 まだ六時前だというのに起こすのは忍びなかったが、寝ぼけ眼の悟飯さんをダイニングへ手を引き、座らせてから朝食をとらせる。うぅん、と目を擦りながらも「このオムレツ美味しい」と、オレを労ってくれる悟飯さんがとても愛おしかった。
「悟飯さん、ごめんなさい。今日からずっと、オレは仕事しに外へ出なくてはならないんです。なるべく早くに帰るようにはしますが、もしダメならウチの母さんが来ますので、夕飯はしっかり食べて下さいね。お昼は冷蔵庫の中にありますから、好きな物食べて待っていて下さい」
「トランクスさん…会社に行くんですか?」
「そう、会社に出社です。色々な会議をしたり、判子を押したり、つまらない仕事なんですけど、やらないとみんなに迷惑がかかっちゃいますから」
「はい、みんなに迷惑かけちゃ、駄目ですよね。ボクおとなしく待っていますから、お仕事、頑張って下さいね」
 ニコニコ笑ってみせてから、悟飯さんは朝食全部をペロリと平らげ「ご馳走さまでした」と手を合わせた。


 朝起きて朝食作って出社して、ようやく帰宅してから急いで夕食を作り、悟飯さんと一緒に過ごし、彼の記憶が戻るまでを待ち続ける日々が過ぎていく。
 そうして一週間が経過した頃には、悟飯さんは大学の参考書を読めるまでに回復し、また、簡単な料理にトライするようになっていた。
 仕事を終えたオレは少し焦り、早足でマンションを目指す。大丈夫だろうとは信じているけどもし火事を起こしたり怪我をしていたら、と考えるだけで気が気でない。
 だがチャイムを鳴らし扉が開くと、そんな心持ちは一気に吹っ飛ぶ。
「おかえりなさい、トランクスさんっ!」
 エプロンをひっかけた悟飯さんがオレに抱きついてくる。
「…今日も、凄く美味しそうな匂いしますね」
「はいっ! 頑張りました!! えぇと今日は…お魚の煮たのと、お漬け物と、お味噌汁です!」
 ここ数日で悟飯さんの指には沢山の絆創膏が巻き付いて痛々しい。しかし、以前と同じように料理をする事で刺激になれば良いだろうし、家の中にこもりきりで本ばかり読んでいるより本人の為にもなる。
「…どうですか? お口に合いますか?」
 熱々の味噌汁をテーブルに置き、おそるおそるオレの反応を待つその顔は紛れもなく師匠なのだが、とても、可愛い。
 記憶を失う前、いやオレが幼かった頃から悟飯さんは料理が巧かったのだが、これはこれで、充分に美味しい。
 魚の煮付けはちょっと甘いし、漬け物は酢をもう少し控えてほしいところだが、風味付けのショウガやユズの香味が抜群だし、疲れた身体に心地良かった。
 大きな目をオレへと向け答えを待つ悟飯さんにオレはこう言った。
「うん、美味しい! 毎日食べたいぐらい、美味しいですよ!!」
「よかったぁ! じゃボクも一緒にいただきますね」
 エプロンを外し、悟飯さんはオレの正面に座ると少しずつ食べ進めた。
「あのぅ、トランクスさん」
「…なんでしょうか」
「ボク…まだ、記憶が戻らないんですけど、学校行っちゃ、ダメですか?」
 学校———それは大学への復帰を意味する。
 牛魔王さんやチチさんが学校側に事情を説明し、休学扱いになっていたというが…まぁ『記憶喪失』とはいえ一時的なものではあるし、第一、悟飯さんは記憶以外に殆ど問題はない。もしあるとすれば、交友関係にあった全ての人間の情報が消え去っているのと、精神が子供に戻っている事ぐらいなのだが…。
「悟飯さん、学校、行きたいですか?」
 オレが聞くと彼は真剣な眼差しで首を縦に振った。
「そうですよね。此処に閉じこもりっきりじゃ、可哀想だ。じゃあ悟飯さん、もう少ししたら大学、行ってみましょうか。但しそれには条件がありますよ?」
「じょう、けん…? 条件って、どんなの?」
 口の端に魚の煮付けをくっつけた悟飯さんが身を乗り出したので、オレは指先で魚の欠片をとってやると『条件』を切り出した。
「まずは、一人で外に出られるようになる事。明日からは、仕事が終わったオレを、駅まで迎えに来ていただきます。…もちろん、仕事が遅くなる時はやらなくていいので、事前に連絡しますけど。とにかく、この近辺や大学までを一人で歩けるぐらいまでにはならないと駄目ですよ?」
「ボク…トランクスさんをお迎えに行けば、良いんですね?」
 それで大学に行けるようになるんだよね、と彼は目をキラキラさせて、ますます頬を紅潮させた。うん、とオレは頷いた。
「後で、此処から駅までの地図を出します。悟飯さん、一人で此処まで来られたのだから大丈夫だとは思いますけど、念の為ですから。あああともう一つ、課題を出そうかな。駅までオレを迎えに来られるようになったら、スーパーでのお買い物もお願いしたいです。朝食、お昼、夕飯の材料や、足りないものを補充するんですよ。財布は悟飯さんに預けますからね」
「ボク、ちゃんと出来るかなぁ…」
「大丈夫。オレは悟飯さんを信じていますから。…でももし困った事になったら、その場ですぐにオレに電話して下さいね。必ず、迎えに行きます」
「はいっ! ボク、やってみます!」
 そしてオレ達は電子ジャーの米飯をあっという間に空にした。






 翌日、しょっぱなからアクシデントだ。現場で施工ミスが発覚し、定時上がりが会議で流れてしまった。慌てたオレはまず悟飯さんに電話を入れ、次に母へとフォローを頼んだ。
 真夜中直前に走って帰宅すれば、ソファーにもたれ掛かって居眠りしている悟飯さんと、その隣には不機嫌な母の顔がある。
「アンタさぁ…実現不可能なミッション、この子に与えちゃダメでしょ?」
 可哀想にアンタの帰りをつい先刻まで駅で待ち続けていたんだから、と母は言った。夕食を食べ、後片付けを済ませた後にどうしても「駅に行きたい」と言い出してきかなかったらしいのだ。
「七時半から、ずっとよずっと。もう帰ろうって言ってもアンタを待つってきかなくてね…おかげでアタシも付き合う羽目になったし、足がパンパンよ。この子、えらくションボリしてたから後で謝りなさいね」
「すみません…。リハビリのつもりだったんです」
 眠ったまま目を醒まさない悟飯さんの頬を撫で、オレは項垂れた。
「アンタ。よっぽど好かれているのね」
 さてアタシも帰りますか、と母は席を立ち、その場を後にした。
 





「今日は一緒に買物しましょう。悟飯さん、着替えてきて」
 公休がとれたその日、朝食をとったオレは悟飯さんを連れて、近場のスーパーへと足を運んだ。
 まずは、青果コーナーと野菜売場だ。
 目をまん丸く見開いた悟飯さんの手を引き、オレは一つの果実を片手に持ち、もう一方の手でコンコン、と叩いてみせた。
「食べ物は、自分の食べごろを語るんです。こうして軽く叩くと、熟れたものとそうでないものが分かるんですよ。ほら、聞いてみて」
「は、はい…。あ、ホントだ! 固い音と、熟れましたって音がするっ!」
 教わった言葉通りに一つ一つの果実を調べ、真剣に対処する悟飯さんの頭を撫で「そうそう、その調子」と褒めると、次は野菜へと近付いた。
「野菜は、綺麗なものより、泥がついているものが美味しいです。栄養のある泥から野菜は元気を貰っているからですね。それに、ピカピカしているものよりこっちの方が、安い。菜葉は、茎がしっかりして、葉が青々しているものを選びましょうね」
 精肉と鮮魚コーナーも回り、新鮮なものとそうでないものの見極め方や、タイムセールはもっと安くなる事とか、乳製品は棚の奥から選ぶ(※この店は賞味期限が迫ったものを手前に出すから)ものだと教えると、
「トランクスさん、すっごく、物知りなんですね!」
 尊敬の意を込めた、輝かんばかりの表情で悟飯さんがはしゃぐ。いやいや実はこれ、以前貴方から教わった事なんですよ…とは言えずに「それほどでもないですよ」と、誤摩化した。
 レジで会計を済ませ、まだ日が真上にあるのを確認すると急に身体が汗ばんでいたのを思い出した。悟飯さんも「暑いなぁ」と、手で仰いでいる。徒歩八分ほどの距離だから大した事ではないのだが…。
 と、まだ年端もいかない小さな坊やがオレ達の横を危なげに駆けていく。何かを手にしていると思えば、コーンに乗った水色のアイスクリームだ。
 オレの傍ら、汗を拭きながら荷物を持っている悟飯さんの喉がゴクリ、と鳴った。脳で財布の中身を確認して、オレは頷く。
 振り向けば、スーパーの出入り口近辺にはフードコートがあった。そこに、さっきの坊やが持っていたアイスを売っている店がある。
「悟飯さん。ちょっと荷物持ってて」
 トリプルを二つ頼み、適当なチョイスで購入したそれを両手にして相手の元へと戻れば、悟飯さんは「それ、なに?」と聞いてきた。オレは笑って近くのベンチに腰掛けるよう促し、二人して座った。
 バランス良く積まれた三つのアイスを手渡し「これは、アイスクリーム。冷たくて、甘いです」と、自分の分を舐めてみせた。それをじっと観察していた悟飯さんもすぐに舐め「甘いっ!」と叫んだ。
「すぐ溶けちゃうから、崩れないよう気を付けて、端っこはこうかぶりついて、口の中で溶かして味わいます。ああ悟飯さん、早く早く、上のバニラを制覇しないと、下の二つが崩れますよ!?」
「うわぁホントだっ、ドロドロしてるっ! …うん、すごい甘くて…冷たくて、おいしい…!」
「よしっ悟飯さん、どっちが早く食べ終えられるか競争ですよ!!」
「はい、トランクスさんっ!!」
 食べ進めて三分と経たず、ほぼ同時に完食したオレ達はニッコリ微笑み合う。さて、今日の昼食は何をこしらえよう…と考えていた矢先、さっきの坊や———アイスを持っていた子だ———がヨチヨチと、駐車場を歩いていた。母親らしい人影は、ない。
「危なっかしいな…悟飯さん、ちょっと待ってて」
 口の周囲にいっぱいアイスをくっつけた悟飯さんは「はい」と頷き、その場に腰掛け、じっとしていた。
 一台の車が、ちょうど坊やの前に来たオレの手前でスピードを落とし、停止した。手を振り「すみません」と会釈し、よっと小さな身体を担ぎ上げる。坊やはキャッキャと両手を叩き笑う。
「もう、ママが心配してるぞ」
 苦笑し、どこか安全な路肩に移動しようとした瞬間、突如背後に派手なスポーツカーが現れ、突っ込んで来る。…避けられない速度ではない…!
《仕方ない…舞空術、で……!!》
 最低限の『気』を練り身体に流す。そして今飛ぼう、と身構えた時、

 ガッ!!

 両脇を何かに挟まれたのと同時、坊やを抱えたままのオレは…。
 パノラマを、見下ろしていた。

「ご…っ、悟飯、さん……!?」
 遠い記憶そしてつい最近まで見ていたあの凛々しい悟飯さんの表情が、オレを見下ろし、この身体を支え担いでくれている。
 周囲の目があまり無いのを確認して地表に足をつけると、呆然としたままのドライバーに文句を投げつけ「施設内に入ったら減速しろ!」と注意も忘れない。
 程なくして姿を現した幼児の母親にも「目を離したら駄目でしょう!」と叱り、しきりに謝ってきたその姿に「言い過ぎました」と謝罪しその場を去ると、何故か放心したまま佇む悟飯さんに歩み寄る。

 …記憶、戻ったんですか? と、聞くと、悟飯さんは悲しそうに「ううん」とだけ、返す。演技では無さそうだし、顔色が悪い。
「ボク…何をしたんでしょう……。うっ…」
 こめかみを押さえ、暑さの所為ではない汗を流しながら「頭痛い」と、悟飯さんは呻いた。その背中を撫でてやり、再びベンチに座らせると、彼は「ごめんなさい」と頭を下げた。
「ボク…、ボクのおとうさん、は……確か、武術家だったんですよね…」
 ええ、とだけ返してやると、綺麗な黒い目がオレに向けられる。
「なんとなくだけど、ちょっと思い出したんです。ボクも…おとうさん、みたいに、戦っていたのかな、って。なんとなくだけど、そんな気がして…」
「悟飯さん、あまり、無理しないで」
 本当に辛そうに眉をしかめ、口元をぎっと引き結んでいる彼の為にオレはタクシーを呼び、急いでマンションへと戻った。

 買物の荷物を冷蔵庫にしまってから冷房をきかせ、悟飯さんにゆったりした部屋着を着せてやり、ベッドに横たえさせる。相変わらず顔色は悪いまま浅く速い呼吸を繰り返す悟飯さんは一言、オレに囁く。

「今度、稽古つけてくれませんか…?」

 それはかつて戦いに明け暮れていた頃を思い出した、という事を意味していた。
 複雑な心境ではあるが…オレは首を縦に振ると、寝室の扉を閉じた。






 …To be continued…



ハイ。腐りきってただれた妄想駄文シリーズ第二弾です。

ワシ、ジェット・リーの某映画大好きです…v トニーが愛おしいの…!!
(この悟飯さんもある意味影響受けまくってますしね!)
さて次はまだ書いていません。もし余力があれば、これからも不定期にちこちこ書きます…♪
ああ早く腐った展開に持っていきたい! でもまだまだ先だよなコレ…(汗)。
by synthetia | 2014-08-24 12:50 | 駄文 | Comments(0)