高宮あきと云う奴によるDBトラ飯ブログです。pixiv(9164777)もやってます♪主に女性向けなので、嫌悪感じる方はご遠慮下さい(汗)。


by synthetia

トラ飯妖精さんのおはなし。

…は? 妖精?
アタマおかしいんじゃないの? とお思いになられるかたはまずリターンを。
元々アタマがおかしい高宮についてこれる方々のみついてきてください(汗)。

まずは、下の絵をご覧ください。
e0124559_20062461.jpg
これはツイに載せていたラクガキでして、そこから派生した『未来師弟の形をした妖精さんネタ』なのです。
これ以上ツイで語ったら収拾つかなくなるので、此処でのみ駄文をアップさせていただきます。
(ノリ的には、ずっと前にアップしたRPGに近いものがあるかも)
とにかく、悟飯さんが弱々しい甘ったれなので、そこは覚悟しといてくださいませ!!

※冒頭は若干、魔師弟要素がございます。

ではでは。スタートゥッハ!!!!
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 ちいさな妖精の物語







 むかしむかし、その昔。
 文明が未だ栄えておらず、電気やコンクリートも無かった頃のお話。

 世界はひとつの大河を境に東と西に分かれており、それぞれの大陸には民と妖精もいました。
 東の大陸は緑が豊富で果実もたわわ、西の大陸は丈夫な鉄で栄えており、住まう人々の考え方もまたそれぞれに違っておりました。ですが、争いはそれほど無く、皆が幸福に過ごしていたのです。

 さて、東の大陸に、『はんちゃん』という名のちいさな妖精が住んでおりました。
 本当は悟飯、という真の名前もあったのですが、呼びやすさと親しみを込めて妖精仲間はみな彼をはんちゃん、と呼びました。黒いつやつやの髪と大きな両目、ちいさなちいさな茶色の翼とくるりんとした尻尾が目印です。
 はんちゃんはお花とリンゴ、木苺のジャムが好きでした。
 雨上がりのキラキラした雫に陽射しの光が宿るさまも好きでした。ですが、一番大好きなのはいつも一緒にいてくれた『ぴこしゃん』という名の、見かけはとても怖そうですが本当は優しい、新緑を司る妖精でした。
 はんちゃんは不思議な身体を持っており、彼が本当に大好きな相手にキスをするとぽろりとハート型の物体が転がります。それはちょうど人間の小指の爪程の大きさです。彼はそれを主食としておりました。もちろん、ジャムをたっぷり塗った白パンや、卵ふわふわのオムレツも大好物ではあったけれど、はんちゃんの身体や命は『愛情』が無いと消えてしまうのです。同じ妖精一族の中でこれを精製できるのは、はんちゃんだけです。大好きなぴこしゃんの事を想いキスをして、飛び出したハートを頬張るたびに、はんちゃんはホカホカとあたたかい心持ちになりました。
 大きな樹のうろの中に、ちいさなちいさな家を建て、大好きなぴこしゃんと一緒に過ごし、絵本を読んで、たまに木苺や綺麗な水を求めに森の中を散歩したりと、はんちゃんは本当に幸せでした。

 ———ですが、ある日を境に空気と水が汚れだしました。
 西の大陸に負けじと、人間の王が工場を増やしたからです。

 緑を司る妖精のぴこしゃんは、みるみる内に弱っていきました。ですが大好きなはんちゃんをひとりぼっちに出来ないのです。
 はんちゃんは頑張って遠くまで歩き、まだそれほど汚されていない地の果物をもいできては、その果汁をぴこしゃんに与え続けました。
「ひとりにしないで。はやく元気になって」
 その甲斐あってか、ぴこしゃんは少しだけ元気になりました。

 …けれどこの後すぐに人間の争い事が起き、森に住まう妖精達の大半が犠牲となってしまいました。木々が焼かれなぎ倒され、火の海がはんちゃんとぴこしゃんを襲いました。
 燃え盛る大きな木がめりめり、と、ちいさなはんちゃんの上に倒れてきました。ぴこしゃんは最後の力を振り絞り、はんちゃんを突き飛ばして下敷きとなりました。
 はんちゃんは、ぴこしゃんの緑色の手を必死に引っ張り、うんしょうんしょ、と助けようとしました。炎の海がアーチとなって二人を炙りました。
 ぴこしゃんは、はんちゃんに石を投げつけ、大好きだった筈の彼に向けて「お前の顔などもう見たくはない」と詰り、さっさとこの森を出ていけ…と叫びました。はんちゃんの目にはみるみる内に大粒の涙が盛り上がりました。
「さっさといけ!…お前だけでも、生きのびるんだ」
 はんちゃんは火の海を潜り、振り返らずに駆け続けました。あたたかなワラのベッドも、絵本も、マーマレイドやジャムの壷も、…なによりも大事だったぴこしゃんや綺麗な森はもう、ありません。

 はんちゃんは、泣きながらとぼとぼと歩き続けました。
 心が砕け散ってしまいました。

 どこまで歩いたのか覚えていません。
 ただ、広く果てしない河がごうごうと音をたてているさまを目の当たりにし、河原の石にちょこんと腰かけてぴこしゃんを想いました。濁った灰色の水を眺め、はらはらと涙を流し続けました。

 はんちゃんの身体は次第にちいさくちいさく小鳥よりもちいさく、金魚と同じぐらいの大きさになっていきました。
 自ら流した涙に溺れ、揺らいでいきました。





「————あれ? こんな所に妖精がいるぞ」

 河辺を歩いていた、旅の妖精がひとり。淡いラベンダー色の髪と深い海の瞳をもった美しい容姿をしておりました。名を、トランクスといいます。背中の大きな白い翼が風に揺れていました。
 彼は元々、西の大陸に住んでいましたが、親元を離れ、つがいとなる相手を探している最中だったのです。そこに、たぷたぷと揺れる水溜りの中でぷかんと浮いたちいさな妖精を見つけたのですから、つい助けずにはいられなかったのです。
 トランクスはハンカチを取り出すと、ずぶ濡れとなったはんちゃんの身体をそっと優しく拭き取って、掌であたためてやりました。ちいちゃな翼もそっと拭います。
「こんなにちいちゃくなってしまうだなんて、どれだけ悲しい目にあったのだろう…」
 可哀相に、と目をこらして眺めてみると、豆粒ほどの顔に大きな切り傷が出来ていたので、手持ちの薬を塗り付けてやりました。…すると、はんちゃんはがばっと起きだしました。
「あ、気が付いたかい? オレは西の妖精でトランクスっていうんだ。君の名はなんというの?」
 問いかけに対し、はんちゃんはぎゅっと口元を引き結ぶと何も答えようとはしません。尻尾は垂れ、翼を僅かに震わせながら警戒を解こうとしないのです。この様子に仕方ないなぁ、とトランクスは和やかに笑うと「お腹空いただろ」と、青リンゴを差し出しました。はんちゃんは、ぶんぶんと首を横へ振りました。
「食べないとますます弱ってしまう。…そうだ…こっち向いて。ちょっとで構わないから」
 綺麗な顔を近付け、トランクスがちゅっ、と、はんちゃんにキスをしてきたのです。慌てたはんちゃんはぎゅっと目を閉じました。
 …すると、桃色のハートがコトン、と河原に落ちます。キラキラとしたそれは透き通って、まるで宝石のようです。はんちゃんは目を見開いて、トランクスと名乗る妖精を見上げました。
「…驚いた? どうやらオレは、キミの事が好きらしい」
 まぁそれは気にせずさっさとお食べよ、と差し出されたハートに、はんちゃんはおずおずとかぶりつき、サクサクと齧り続けました。甘酸っぱくてみずみずしくて、とても美味しいと感じました。

 戦火が及ばない地を探し求め、牛さんやニワトリさんヒツジさんの沢山いる牧場近くの林へ彼らふたりは身を寄せ、ゆっくりと空を眺めたり、トランクスは牧場のお手伝いをして、そのご褒美にやミルクやチーズをもらって過ごしていました。
 数日もすると、はんちゃんの姿はほぼトランクスと同じ大きさにまで戻っていたのですが、すっかり心を閉ざしてしまった黒い両目はうつろです。
 笑ったお顔はもっと可愛いのだろうなぁ、と、西の妖精は内心残念ではありましたが、今さっき牧場の主にいただいたチーズはおいしそうな匂いを漂わせています。少しは、美味しいと言ってくれるといいな。
「ただいま。…おや、そのジャムとパン、どうしたの?」
 帰ってみれば、切り株のテーブルには木をくり抜いて作ったかわいい器とその中には木苺のジャム、真新しい葉っぱの上には柔らかそうな真っ白いパンがほかほかしています。そのすぐ傍にじっと腰掛けて待っていたはんちゃんはちょいちょい、と自分を指差しました。トランクスは目をまん丸くして「すごいすごい!」と、褒めました。
「うわっ、そのテーブルも食器も、あああのかまどもみんな、キミがこしらえたっていうの!? 本当にすごいや!!」
「お前には世話になったからな。…このぐらいは当然だ」
 頬杖をついたはんちゃんは、ぷいっとそっぽを向くと「早くそれ食え」と指差します。トランクスはニコニコ顔で甘酸っぱいジャムをたっぷり塗り付け、白パンを頬張りました。土を焼いて作った手製のマグにミルクを注いでゴクゴクと飲みました。
「…あ、キミ、ちょっとおいで」
 トランクスに呼ばれ、はんちゃんは黙って自分のほっぺを差し出します。綺麗な顔立ちをした西の妖精にキスをされるたび、何故か胸がばくばくとうるさいので、はんちゃんはこれが苦手でした。
 ハートが数個、コトン、と落ちます。妖精達はそれらを拾い集め、黙ってお口へ運びます。
「キミも随分元気になったようで良かった。この国は平和だって話を聞いてたけれど、どうやら噂と違うらしいね」
 人間達は本当に強欲で困るよね、と、蒼い瞳をくもらせて真剣に語る西の妖精にはんちゃんは「だったら自分の国に帰ればいいだろ」と投げ捨てます。でも、本心ではもうひとりぼっちになりたくなんかないのです。でもトランクスの前だと、どうしても強がってしまうのです。はんちゃんは己の言動にびくびくしながら相手の返答を待ちます。
 すると、トランクスは「この国のミルクやチーズをずっと食べ続けていたいからさぁ」と呑気そうに語ります。
「それに、キミの作るパンとジャムもね」と、付け足します。
「ねぇ…もうそろそろキミの名前を教えてよ。キミ、ってなんだか味気ないしつまらないじゃないか」
 はんちゃんはおずおずと「…悟飯」とだけ、答えました。
「ゴハン? …なんだか食べちゃいそうな名前だね」
 ぷっと吹き出すトランクスの姿に、黒い両目は怒りを露にします。
「うぅ…だったら…『はんちゃん』で、いい…」
 ———あの森でみんなにそう呼ばれていた苦い思い出がよぎり、あやうくまた涙を浮かべそうになったのですがどうにか堪え、新しい相棒に呼び名を伝えたはんちゃんはガブリとハムへとかぶりつきました。
「はんちゃん…か。うん、キミにぴったりだ」
 トランクスはうんうん、と頷いて、彼もハムを頬張りました。





 綺麗な空と水で栄えていた東の大陸に暗雲がたちこめてきました。

 畑や牧場を取り壊し、製鉄所や工場が次々と建てられました。
 汚されていく水と空気に、魚と動物たちの嘆きが絶えません。

 もっと楽な暮らしを手に入れたいと望む者達が大地と共に生きる事を放棄し、鉄と鋼を讃美するようになっていき、妖精もまた苦しみ始めました。
 ただ例外として、西の大陸で育っていたトランクスは穢された大気への耐性もほどほどにありましたので、なんとか平気です。
 しかし、一旦は回復していたはんちゃんの体調はまた翳りを見せ始め、随分と顔色も悪くなっていきました。元々、空気の澄んだ森で生まれ育ったはんちゃんが木の実や湧き水を一切口に出来ないという状況はあまりにむごいものでした。
 それでも健気に「平気だ」と言い、人間達に混じって糸を紡いだり、縫い物を手伝ってはその日の食い扶持を稼ぐのです。トランクスは毎日はんちゃんの顔色を確認しては安否を気遣いました。
「ねえ、はんちゃん。オレと一緒に、オレの国に来ない?」
 西の大陸は開発と技術が進んではいますが、中央部に美しい滝とエメラルドグリーンをした森林もあり、女王が住まう都付近にはのどかな風車の回る村も幾つかあるのです。そりゃあまあ、かつての東の大陸には及ばないにしても、ここまで空気も悪くないのです。
「女王さまもきっとキミを受け入れてくれるし、そしたらオレと一緒に都近くの村で家を借りて暮らそう。ああ、それか滝の近くに住んで、祭りがあったらそこまで出向いて楽しく過ごすのも悪くないね」
 トランクスの提案をはんちゃんは首を横へ振り、拒みます。
 …本当は、行きたいのです。トランクスの話は夢のようで、それこそ胸の中では透き通った滝を眺めたりしたいし、トランクスと何時までも一緒に暮らすのも悪くない…とも密かに憧れていました。
 でも、怖いのです。こんなにも幸福に慣れてしまったらまた、ぴこしゃんや森を失った時と同じようになってしまうのでは…と。そうしたらもう二度と立ち直れないし、言葉通り消えて無くなるかもしれません。どうしても口に出して伝えられないはんちゃんなのです。
「…はんちゃん、ほっぺ出してごらん?」
 相変わらずトランクスは毎日、はんちゃんの頬にキスをします。毎日違う色のハートがコロコロと生まれます。はい、と差し出された『愛情の証』を、はんちゃんは黙って受け取り、もくもくと食べました。…こんなにも感謝しているのに素直に『ありがとう』と言えない自分を呪いながら、じっとトランクスを見つめます。目が合ってしまうと慌てて「お前の仕事はどうなんだ?」と近況を求めます。トランクスは製鉄所で燃料となる炭を補充する仕事をしておりました。
 心配してくれるの? と、はにかむように微笑むその姿も、立派な白い翼も、みすぼらしい自分とは大違いです。元々、人間とより近い暮らしをしているトランクスは姿形だけでなく中身も洗練されており、それがはんちゃんには悩みの種でした。
「…あそこ、火の妖精もいるんだって聞いたけど」
「ああ、いるいる。ダンスが上手で、とても綺麗なんだ」
 ふぅん、と、はんちゃんは頬杖をつき、最後のハートを食べ終えると「明日も早いから」と、寝床へ潜り込みました。





 翌日———珍しく雪のちらつく寒い夕方、はんちゃんが夕食の準備をしている時でした。遠くからトランクスの姿が見えましたが、いつものように手を振ってくれません。どうしたんだ、と歩み寄ろうとした瞬間、トランクスは手にした荷物ごとどすん、と地面に倒れました。
「……おっ、おい……!」
 しっかりしろ、と手を差し伸べてみれば、それは酷い熱でした。
 はんちゃんは我を忘れてトランクスの身体を担ぎ、かまどでたくさんお湯を沸かし、気を失っている彼をワラのベッドに寝かしつけましたが、熱は一向に下がりません。目の周りは落ち窪み、どす黒くなっていました。
 こんな時、ぴこしゃんであれば良く効く薬草を出してくれたのでしょうが、はんちゃんは愛を司る妖精であり、癒しの力はまったく無いのです。
 辺り一帯を探せど近くに薬草も生えておらず、手持ちのお金は明日のパン一斤を買ってしまえばおしまいです。日も暮れ、人間のお店も閉まっています。妖精の自分達を人間に診せても治しようがないのです。それは、はんちゃんが一番良く知っていました。
「…ど、どうすればいい…?」
 ぴこしゃん助けて———と、はんちゃんの目にまた涙が盛り上がってきたその時———目覚めたトランクスが「はんちゃん…」と呼びかけてきました。はんちゃんは急いで傍へ寄りました。
「と…っ……トラ…お、おれ、何をすれば、いい…?」
 はんちゃんの頭の中に、自分を必死に追い払おうとするぴこしゃんの顔がよぎり、また一層目の前がぼやけ霞んできました。でもトランクスが苦しんでいる。泣いてはいけない。拳で涙を拭い、もう一度トランクスへと呼びかけました。何かしてほしい事はないか、と。
 すると、真っ赤な頬をしたトランクスは苦しそうに息をきらしながら「何か飲ませてほしい」と、ニッコリ笑って頭を撫でてくれました。はんちゃんは台所へ行き、飲み水をマグへ注いでトランクスの元へと運びました。…綺麗な蒼い瞳はまた閉じられ、ぐったりとしたトランクスがはぁはぁ、と苦しそうに喘いでいました。
 水の入ったマグを口元へ運んでも、ちっとも飲もうとしません。どころか呼吸も浅くゆっくりとしたものへ変わってきています。
「…水……飲んで…」
 飲まないと干涸びてしまう。消えてしまう。
「飲めよ……飲んで…っ、飲んでよ、なあ…」
 また独りになるのは嫌だ。はんちゃん、と呼んでもらえないのは、嫌だ。ふたり並んで一緒にパンを頬張ったり、朗らかなその声や笑顔をもう一度自分に向けてほしい。…キスしてもらいたい…。
 はんちゃんは意を決し、マグの水を口に含むと、そうっとトランクスの唇に自分のそれを押し当て、少しずつ、ほんのひとしずくずつ、丁寧に優しく飲ませていきました。彼の唇の熱さが直に伝わってきて、はんちゃんの全身はじんじんと火照っていきました。
《熱、うつっちゃったのかな…それでも、いい…》
 どうか死なないで。もう独りにしないで———。
《身体中がむずむずする……》
 どくんどくん、と、心臓が祭りの太鼓のように内から外へ激しく叩き付けてくるのを覚え、何時の間にか飲ませる水が尽きてしまってなお、はんちゃんはトランクスの唇に吸い付き、無我夢中でキスを繰り返していると————。

 ———コトン、コトン、トン…。

 はんちゃんは我が目を疑いました。
 だって、床に転がっていたのは紛れもなく…ハートだったのです。
「え……? え、ど、どうして…っ」
 悩んでいる暇はありません。はんちゃんはそれを拾い集め、急いで噛み砕き、口移しでトランクスに『愛情』を注ぎ込みました。自分達妖精にとって『愛情』こそが何よりのご馳走であり、薬にもなるのです。こんなちいさくみすぼらしい自分のもので果たして回復させられるかどうかと悩みながら、ちいさな舌を使って、詰まらせないよう注意をしながら飲み込ませている内に…。
「…っ、は、はんちゃ、ん…」
 トランクスが目を開きました。どす黒かった顔色もピンクになり、深海の瞳もしっかりした光を湛えています。はんちゃんはほっとしたと同時、おいおいと泣き出してしまいました。
「わわっ、はんちゃん、はんちゃん、ちょっと泣かないで…」
「ぅあ……ええぇ…ん…っ、う、ひぐ…っ」
 せっかく元通りになった身体がまた縮んでしまう———と、焦ったトランクスは可愛いほっぺを拭い慰めるものの、はんちゃんの身体は何時までたっても縮まないし、そのままである事が分かります。
 そう。哀しみにくれて流す涙ではなく、嬉しくて弾けそうになった感情が溢れ出しているだけなので、大丈夫なのでした。
「…はんちゃんのハート、まるまるしてて、栗みたいな味するね」
 すっかり元気を取り戻したトランクスがはんちゃんの顔を覗き込めば、そっぽを向いたはんちゃんは「トラのと全然ちがうから」と、か細く答えます。お耳は真っ赤になっていました。
「ねえ、ハートが出るって事はもしやキミ…」
「き…聞くな…」
「聞いちゃダメ? オレ今すごく嬉しいんだけど」
「…お、おれ、トラと、全然違うから…」
「それ、どういう意味なの?」
「そのままの…意味だよ。だって俺、トラみたいに、き、キレイじゃない……」
 翼だってちいさいし真っ白じゃない、と、はんちゃんは身体を縮こまらせて、トランクスの目線から逃れようとしました。ですが、トランクスにしてみれば、はんちゃんのちいさな可愛い翼はスズメみたいで愛らしいし、くりくりした黒い瞳やつやつや光る髪はどんな色にも見えて美しいと思っているのです。出会った当初から心を鷲掴みにされていたトランクスはもう耐えられない、と、愛する相手に口付けをし、その先へと突き進みました。
 はんちゃんもまた、されている事の意味はわからないけれど、ぴこしゃんに対する愛情とは別の意味で芽生えた『大好き』という想いに全身を開き、トランクスの熱に溶かされていきました。
 互いにキスをして愛おしさを噛み締めるたびに、床には次々とハート型の結晶がコロコロと転がり、またひとつ、もうひとつと生み出されていくそれが目映い光を放ち、ついには自分達が作り出した山積みの『愛情』に驚き、しばし呆然としてしまう程でした。
「…ど、どうする、こんなに…」
「これなら一ヶ月はもちそうだね」
 そうしたらしばらくキスはしない方が良いだろうか、と、はんちゃんが目を伏せ俯いてしまったので、トランクスは彼のほっぺたにチュッとキスをします。また、ハートが転がりました。
「これをみんな食べ終えたら、オレの国に行こう」
 大丈夫、この翼でひとっ飛びするだけさ———彼は朗らかに笑い、はんちゃんの髪をわしわしと撫でました。
 はんちゃんも、にっこり微笑みました。





 それからというもの、西の大陸に渡ったふたりの妖精たちは、女王に謁見を求め共に暮らす許可をもらうと、水晶のように美しい湖のほとりで何時までも仲睦まじく、幸福に過ごしたといいます。
 愛を確かめ合うたび、それはもう食べきれない程の結晶ができてしまう為、考えに考えようやく辿り着いた答えは『疲れきっている人間にも愛情をお裾分けしてみてはどうか』という結論でした。
「トラ、今日もみんなにお裾分けしに行ってくるよ」
 ちいちゃな可愛い翼をパタパタとはばたかせ、はんちゃんは今日も人間の世界へ足を運びます。無論、トランクスも、大きな白い翼をはためかせ、余裕の無くなった表情の人間達にほんの少しずつ、けれど確実に『愛情の証』を振りまいているのです。

 ———それが所謂『萌え』のはじまりであったとか、ないとか。
 今も昔も変わりなく、妖精達はみんなを元気にしているのかも知れません。





 END.

 
  

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by synthetia | 2017-01-17 20:12 | (主にトラ×飯)駄文 | Comments(0)