高宮あきと云う奴によるDBトラ飯ブログです。pixiv(9164777)もやってます♪主に女性向けなので、嫌悪感じる方はご遠慮下さい(汗)。


by synthetia

未トラ飯青年期SS。

支部でUPしていた『墜ちる日』の続き(…って、読んでいなくても全然大丈夫なショート)を一本。
今度は、トランクスが体調を崩す話。
社長という重い足枷は、彼の心と身体を蝕む。だが…。

※前半部分、結構キツい描写があります。
 食事前、または後に読まない方がいいかも、です。


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 …実は数日前から兆しはあった、それは否めない。ただほんの少しばかりの違和感だとか「ちょっと疲れたな…」と思う程度だったり、さして重要視するような体調ではなかった訳だ。だからこそ出社もしたし、第一、今のオレは社長なのである。会社のトップが欠勤だなんてあり得ないだろう…。

 だが———昼過ぎから背筋に悪寒を覚えたのをきっかけに、みるみる内に節々に痛みが奔り、胃の腑はボコボコと波打ち始めた。気付けばシャツは汗でべったりと濡れる始末で、しかも瞼は異常に熱く、それでも提携先との協議をキャンセルする事はままならなかったので出席し…『いつものように』まぁオレ個人の事で色々とご意見なさる連中とのやり取りですっかり体力も尽き果ててしまい———オレは舞空術で直帰した。同行していた秘書のみがこちらの体調を周知していたので「私がお送りしますが」と申し出てくれたのだが、敢えてそれは断った。
 …正直、突き上げてくるものを堪えるのが精一杯だったのと…あまりのやりきれなさと悔しさで…オレは上空で幾度も顔を拭わなければならなかった。高熱に侵された全身は焼き切れんばかりだったし、無理してかっこんだ弁当がまさに腹の中でごぼごぼ、と呻いている。
 天候は良くない。冷気が肌に痛い。鼻がつんと痛く、ひりついた。
 何度も何度も、喉奥に潜む苦酸っぱい液体を飲み込んではえずき、その繰り返しで普段の倍以上もかけて漸くオレは悟飯さんの待つマンションへ帰り着いた。







 振り返る日







 エレベーター前に誰もいないのを良い事に、喉から酷い音を出す。
 中に乗り込むと、いよいよ加速しだした吐瀉物が食道をゆるゆると突破し、最上階に向かうボタンを押す指が止まる。
 早く辿り着いてくれ、と願う。視界がぶれ、手足が冷たくなった。膝が笑っている。
 目的のフロアに到着する。鍵を取り出そうとするが、遂に口の中に粥状のものが滑り込み、諦めてチャイムを鳴らした。早く開けて、早く家の中にオレを入れてくれ…たすけて悟飯さん、と願いながら。
 ドアがゆっくりと開いた。待ち焦がれていたその人は最初「鍵くらい自分で開けろよ」と言いかけたのだが直ぐに異変を察したのか、黙ってオレを抱え込むと中へ入れ、施錠した。
 ごはんさん———そう言おうとした瞬間、決壊した。不快な水音が床を乱暴に叩き付けていく。開いた口から怒濤のようになだれ落ちていく胃の中身が独特の臭気を放ち、玄関先は二目と見られない酷い有り様となった。
 がくつく身体をどうにか立たせようと努めるも、ごぼっ、とまた胃が収縮し、第二波がカーペットをも汚していく。
 なのに悟飯さんはオレをしっかりと抱きとめたまま背中をさすり、オレが落ち着くまでそのまま吐かせてくれた。
「…おかえり、トランクス」
 よくちゃんと帰ってこられたな、偉いぞ———と、頭を撫でてくれるその顔を見上げれば、心底こっちを案じてくれているだろう笑顔が、あった。
 汚してしまってごめんなさい…と謝罪をして、後ですぐ掃除する旨を伝えるがそこはやんわりと断られ、彼の手がてきぱきとオレのスーツを脱がせていく。ぐちゃぐちゃのそれはもう、使い物にならない。
「口、ちょっとゆすごう。こっちおいで」
 それからシャワーも浴びとこうか…と、彼は嫌がる素振りさえみせず献身的に付き添い、洗面所でうがいを済ませたオレと一緒にシャワーを共にすると優しくドライヤーで髪を乾かしてくれて、清潔な香りのする寝室へ誘導してくれた。そして何時の間に用意していたのか「トイレまで間に合わなかったら…」と、洗面器をベッドの脇に置く。
 太陽の匂いがする掛け布団に安堵するも、横になった事で再び、関節の痛みと気怠い熱さが甦る。乾かしたばかりの髪が瞬く間に汗で湿っていく。…喉はひりついて苦辛い。内臓そのものが煮えているようだ。
「今の具合はどう? 胸、むかむかするの?」
「………はい」
「水は、飲めそう? あ、その前に…熱測ろうね」
 ちょっとだけ待っててくれよ…と、一旦退室した悟飯さんだが五分とかからず氷枕と毛布そして体温計を携えて戻ってきてくれた。ぜぇぜぇ、と喉から奇妙な呼吸音。こんなみっともない所を大人になってまた見せるとは思っていなかったな…と、視界が滲みだす。幻滅されたろうか…もう、ちいさなトランクスじゃなかったつもりなのに…。
「トランクス? はい、ちょっとだけ頭、あげて。そう、上手だよ」
 ひやりとした氷枕がぼやけ霞む意識を少し取り戻させてくれた。体温計を脇に挟んで検温している間、オレは今朝から夕方にかけての体調を説明し、明日病院に行ってから出社する、と語った。だが悟飯さんは首を横へ振ると「今は何も考えないで」と、煮えたぎる額にその冷たい掌を乗せ、唇を綻ばす。オレンジの逆光に照らされた彼はとても、綺麗だった。まるで太陽みたいで眩しい。
「明日の事は、明日考えよう? 何か欲しい物があったらなんでも言ってくれ。俺、用意するから」
 あれ…なんでだろ、今日の悟飯さん、すごく優しい…。
《そっか、オレの具合が悪いから、か…》
 嬉しい半面、なんだか心の奥がすっと冷たくなっていく。
《…はずかしい…》

 熱は、39度2分と大分高めである。
 そういえば弁当を完食し終えた辺りからやけに胃がチクチクしたし、身体の内側から熱くなって肘が痛みだしたんだった。
 何か悪い病気でなければいいんだが…と懸念する傍ら、悟飯さん曰く「ウイルス性のものじゃないと思う」との事だ。
「時期的にも多分、感染する類のものではないだろうし…その、キミ最近ずっと帰りが遅かったし疲れも溜まっていたんだろう? きっとその所為もあるんじゃないか?」
 ———あと、ストレスも起因しているかもしれない、と彼。

「いつも、ずっとキミは、頑張り続けていたからなぁ。…ま、たまには周りに甘えて、ゆっくりと休みなさい」
 それと欲しいものあったら何時でも言ってくれよ、と力強く微笑むさまはここ最近ずっと見慣れていた『年下の恋人』としての彼ではなく、かつての師匠『孫 悟飯』の顔で———ますます気恥ずかしくなったのと、これまで抑え込んできた感情がないまぜになって…オレの涙腺は意思と関係なく、滝のようにぼろぼろと痴態を露にした。え、と悟飯さんの驚く声を耳にしたが、もう止まらなかった。
 そうだよ…オレ、ずっと、頑張ってきたんだよ…。
 悟飯さんがいなくなっても自分がいる、かあさんを守らなきゃ、しっかりしなくちゃ、あの母の息子なのだから常に毅然としていなきゃダメなんだって…。
 とうさんだって、いくらオレが頑張って強くなっても『誇り高き王族の血筋が流れているのだから当然だ』と言ったし…。独学でいっぱい頑張って知識を高めたつもりでも、母はそれを当たり前のように受けとめるだけ。
 誰も…オレに『よく頑張ったね』だなんて、言ってくれなかった…。

『どこの馬の骨とも知れぬ血をひいていようと、あのブルマ様のご子息ですからなぁ』
『首から上だけは常にトップで羨ましい限りで』
『副社長無しでご説明は大丈夫ですかな? おや、メモを見ながらですか。ま、お飾りの社長ですから仕方がない』

 ———私生児であるオレの印象と評判があまり宜しくないのは、承知の上だ。それでも母とオレは現状のまま進むしかない、それは分かっている。
 母も、歳だ。今からオレが平社員から学んでいたのでは、もしもの事態に対処出来ない。まずはトップの交代を印象づけ、次世代に繋いでいかなくてはこの先で生き残る道は無いのだと、かあさんはよく語っていた。
 社内のみんなも一生懸命ついてきてくれる。オレはいずれ、母と同じように『家族』を引っ張り続ける長となっていかなくてはならない。
 …でも、でも、本当はもう嫌だ…今はもう…怖い…。
 毎日、毎日、頑張っているのに———それを一蹴されるのは———。

 悟飯さんは黙ってオレを引き寄せ、胸を貸してくれる。大きくて広くてあったかくて…さらさらと乾いた石鹸の匂いのするパジャマがどんどん濡れて、その上半身全てが染みだらけになっていくのに嫌がらなかった。人間、何処にこれだけの水分を貯めていたんだろうって程にどんどん内側から溢れ出していって、口からは子供みたいな嗚咽が止まらない。
「…トランクス…」
 かける言葉が見つからないのか、彼はずっとオレの名ばかりを繰り返し、そっと優しく背中や頭を撫で続けては「よしよし」と囁いた。そんな子供騙しの行為だなんて普段だったら撥ね付けていたオレだったけれど…今はもう、嬉しい…僅かに残っていた子供の『トランクス』が、誰かに褒められるのを欲していたみたいだった。

 やがて悟飯さんは「30分だけ時間をもらうね」と言い、オレの元から去っていった。汚してしまった玄関の洗浄など色々面倒な役割を引き受けてくれているのだ、致し方ない。
 けど、ますます内臓が煮えて気持ち悪いのに唇がかさついて、喉が貼付いて苦しい…布団など無くしてしまいたいぐらいに蒸す。灼熱の塊がぐりぐりと侵略してきて、目など開けていられないのに、眠れない…心細いし、このまま死ぬのなんて嫌だ。悟飯さんに戻ってきてもらいたい…。
「トランクス、」
 何時の間に戻ってきていたのか。先程まで寝間着だった筈の悟飯さんは、紺色のシャツとジーンズを着て、コンビニ袋をぶら下げていた。
「はい、お水。あとは…シャーベットと、アイス。それとゼリーとプリンもあるぞ。どれか食べてみるか? …あ、無理はしなくていい」
 こんなにも沢山用意してくれたというのにオレは首を横へ振ると「リンゴをすったのが食べたい」と要求した。昔よく熱を出すと必ず彼が食べさせてくれたのを思い出したからだ。
 果たしてこの無理難題に応えてくれるだろうかとびくついていたが、相手は微笑を作ると「わかった。ちょっと待ってろよ」と、嬉しそうに駆け出て、ほんの数分でリンゴをすりおろしたものを用意してくれた。ほんの一匙、二匙と口にしてみるが、途中で口中に広がる味覚そのものに不快感を覚え、すぐに洗面器へ戻してしまった。
「…っ、ご、ごめん、なさい…っ…、ごはん、さ、ん…」
「大丈夫、大丈夫。焦らなくていいからね」
 残ったこれは冷蔵庫に入れておこうか、と悟飯さんは水を手渡してくれ、それを一口飲むとすっきりした。どうやら現状のオレは、水分以外は摂取出来ないらしい。でも、いきなり沢山飲み過ぎても多分、吐き戻してしまうんだろうな…舐めるようにちびちびと口つけたペットボトルをベッド脇に置くと、あとはじっと丸くなって身体を休める事に専念した。
「…悟飯さん…お願いだから、もうちょっとだけ、そばにいて…」
 随分と無理な頼みだろうに、彼はあっさりと引き受けてくれ、よいしょとオレの隣に潜り込んでくれた。
 そして、
「キミが甘えてきてくれるの、久し振りだよね…」
 確か一緒に暮らすずっと前にも同じような事、あったよな———そう悟飯さんが語るのを聞き、熱とは違う意味でオレの顔はガッと熱くなった。…う、そうだ、確かあの時は…熱も出していなかったけど…いきなり悟飯さんの実家に押しかけて、しかも悟飯さんは当日のアルバイト欠勤してまでオレに構ってくれたんだっけ…。まさに黒歴史だ…。
 だが、そんなオレの気恥ずかしさなど気にも留めず(あるいは察してさえいない)、オレにそっと腕をまわす彼はとつとつと語り続ける。
「俺は、いつもキミに支えられて生きてきたから…今度は俺がキミを支えられたらいいな、って…。でも最近、頑張るキミに甘えてばかりいて…ちゃんとしてあげられなかったからさ…」
 どこが? そんな事全然ないよ、寧ろ悟飯さんの方が頑張ってるじゃないか———と言いかけたのだが、生憎と高熱で身体全体がうまく機能せず、オレはただ彼にしがみ付いて呼吸を繰り返すよりほかはない。悟飯さんの鼓動と、健康的な体温が気持ちよかった。
「トランクス、キミは俺の…いや、この復興していく世界の希望そのものだ。そして、ブルマさんにとってもね。だけどもし潰れそうな時は、俺やブルマさんに言って? 俺もね、キミを守りたいんだよ。キミが俺をずっと支えてくれたのと同じように、俺も……そうしたい」
「…もう、充分過ぎるほど、支えてくださってるじゃないですか…」
「口をきく元気が出てきたか。…それなら大丈夫だな」
 吐気は無いか? トイレ、行きたいなら付き添うぞ…と申し出てくれたので、迷わず甘えて用を済ませ、ほんの少しだけでもと、ベッド以外の空間で過ごしテレビを観ると大分気分は落ち着いた。先程残してしまった摺り下ろしのリンゴを口にしてみたら驚く程美味く、全部たいらげた後に解熱剤を飲み、オレはパートナーに抱えられてまたベッドに戻った。

 それから———「明日は休みなさい」と命じられたオレはしぶしぶ頷くと、悟飯さんにぎゅっとしがみ付き、横になる。あれ程までに悪寒があったのが嘘のようで、身体こそ熱かったけれど嫌な痛みもどんどんひき、ああ明日もこうして悟飯さんに甘えられるなぁ———と安堵感に包まれ、急速な睡魔に落ちていった。







 遠い意識の片隅で、悟飯さんがなにか電話をしているらしい声を、耳にした。相手はきっと、母だろう。

「…はい、絶対に、絶対に休ませますよ。もし出勤させろだなんて言ったら俺…許しませんから…」

 そうそう。昔っからこの人、オレには過保護だったんだよな。
 かあさんが「医者だなんて」とカラカラ笑っても、絶対に町医者に往診させるようにしてくれたし、薬は無くなるまで飲めだの、汗をかいたら羽織るものを用意するだのと、兎に角石橋を叩いて渡るような、そんな人だったよ、悟飯さんって…。







「あらぁトランクス! 結構顔色いいじゃな〜い!」

 翌日———点滴を終え、三日分の薬を受け取ったオレの元へ母はやって来た。セオリー通り、大袈裟なカゴに入れた果物をどっさり手土産に、である。
 寝室に母を通す際、少し眦をつりあげた悟飯さんは「あまり長話しないでくださいよ」と、どっちが母親か分からない状態でサンドイッチにされたこちらとしても戸惑うばかりだったが、母も母で「じゃあ十五分したら悟飯くんとティータイムね」と、結構図太い。
 悪いんだけどアンタは席外してくれる———と、母に命じられるがまま悟飯さんは無言でリビングへと去り、残ったのはオレら母子。
 かあさんはどうやら業務の途中で此処へ立ち寄ったとみえる。彼女を良く引き立てるデザインのスーツと靴がそれを物語っていた。

「…ねぇトランクス。エドマンドとケイゴが貴方の事、褒めていたわよ。体調が悪いだなんておくびにも見せず堂々としてた、ってさ」

 その名にはとても憶えがあった。…オレはもう「え!?」と叫んで思わず立ち上がる。だってその二人は毎回こちらをチクチクと攻撃するわ厭味の連続で、彼らに賛美されるだなんて、とうさんに褒められるよりもあり得ない事だと思っていたから。
 オレは母にもう一度「それ、勘違いでしょ」と問いただすが彼女は更に破顔の笑みを浮かべると「ぜ〜んぜん」と、手を振る。
「毎回顔を出す度に意見も振る舞いもトップに相応しく成長しているし、当初は共闘するのは躊躇っていたけど、昨日は本当に感心した、今後も是非共に頑張っていこう、って」
 ———アンタはやっぱり、アタシの自慢の息子よ———そう母はニコニコ顔で言い退けたが直後、急に顔を曇らせて「…でも無理もしなくていいのよ」と、およそ彼女らしくない発言をする。
「ごめんねぇ、トランクス。お前が無理していたのは知ってたのに、アタシも全然止めてあげられなくて。最近、繁忙期だからってお前に振る通常業務の物量を増やし過ぎていたわ…。ただでさえ外回りや会合もあるっていうのにアタシ、馬鹿だった」
「かあさん…そんな事、ないよ」
「今日も、てっきり悟飯くんに怒られるだろうな〜って思ってたんだけど、あの子に『すみませんでした』って頭、下げられちゃった。アンタの体調管理を怠った、と言いたかったんでしょうね…でも一番悪いのはアタシ。…本当はもっと焦らずにいきたかったんだけど…いつもお前に甘えてばかりでごめんね…」
 うわ…そんな。やめてくれよ、そんなのかあさんらしくないよ。
「かあさん! オレは全然、大丈夫だから…。無理もしていないし、最近仕事が楽しくなってきたんだ。今回の事だってオレが勝手に体調崩しただけだし…」
「そう? 仕事、面白くなってきたんだ」
「はい。そりゃああの爺さん達…いえ、ご一緒していただいている皆さんと肩を並べるのは多少気後れがあるというか…でもオレ、かあさんの息子だからとかそういうのを抜きで、ちゃんと自分らしく向き合いたいんだ。なんというのか…逃げたく、ないの、かも…」
 ———じゃないと、とうさんや悟飯さんにも顔向け出来ませんし、と付け加えて、オレは母に向き直った。
「明日には必ず、復帰します。だから…かあさんが謝らないで…」
「あらら。完全にワーカーホリック? 明日、日曜よ」
 そうでなくてもお前の『お嫁さん』おっかないんですもの、と母はよく通る声でカラカラと笑い、「じゃ、悟飯くんとお茶してくるね」と、呑気な表情で去っていく。

 ———憑き物が落ちていった、そんな気分。







 それから三十分後には母も去り、ずっと閉めっぱなしだったカーテンを開け、澄みきった眩しい空と風を全身で味わうと、悟飯さんがガラスの器に盛った果物を持ってきてくれた。食べ易いように皮をむいた葡萄とリンゴにバナナ、それとメロンを小さくカットしたものなど。
「よく噛んで飲み込めよ。お茶は、あったかいのでいいな?」
 どことなしか声音も表情も通常モードに切り替わった悟飯さん、なんだかちょっとだけ不機嫌そうだからきっと、かあさんと衝突でもしたのかな…でも、いい。今はもう少しだけ、甘えたい。
 普段口にしているものより香りも甘味も上品な果物を食べ終え、満足を覚えてベッドの上で雑誌を読もうと手を伸ばす傍ら、「掃除するからリビングに行ってろ」と無体な事を言い出すパートナー。
「熱、37度になったんだろ? その程度なら死なん」
 ———元気になったらもっと丈夫に鍛え直してやる、と眉間に皺寄せた悟飯さんはもう昨日の天使ではなく、口煩いスパルタ師匠のそれである。慌てて上着を片手にリビングへ逃げ込むオレを押し退け、掃除機をズーズーいわせて家中徘徊する悟飯さんがいた。

 …あ…テレビ欄、面白そうな再放送があるな、と目をつけた瞬間、

「おいトランクス! サヤエンドウのすじ取り手伝ってくれ!」

 またしてもオレの休息は遮られ、やれやれこれだったら早く元気になって、業務に向き合っていた方がラクだろうな…と溜息をひとつするのだが、なんやかんやで悟飯さんは「そろそろ布団に戻れ」とか、オレが読もうとしていた雑誌を数冊、用意してくれるから優しい。
 ちなみに今日の昼は、サヤエンドウのスープとおじやらしい。
「早く元気になれよ。そうしたらまた色々と作ってやる」

 ニヤリと笑った悟飯さんが頬張るのは、ロールキャベツ。

 ああもう———早く元気になったら———。
 食べたいのはそっちじゃなく、貴方そのものです。



《ありがとう。これからもまた、頑張れます》







 END.


思えばうちのシリーズでトラが弱音を吐くのが少なかったので、たまにはこういう話も書きたかったのです。
トランクスが甘えてくれるの、実は嬉しかったりする悟飯さんが萌え…♡

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by synthetia | 2017-04-16 15:18 | (主にトラ×飯)駄文 | Comments(0)