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高宮あきと云う奴によるDBトラ飯ブログです。pixiv(9164777)もやってます♪主に女性向けなので、嫌悪感じる方はご遠慮下さい(汗)。


by synthetia

未来トラ×飯小説UP。

休みなんでつい書いてしまいました(照)。話の舞台は真武道会2後の世界です。
全2話完結で、前編が悟飯パート・後編がトランクスパート。
ちょいと乙女風味です(笑)。
※女性向け注意





Be paralyzed 01 〜悟飯編〜

 復活からそれほど月日が流れた訳ではないのだと、壁にかかったカレンダーが教えてくれた。たった二ヶ月弱。よく人は『嫌な時ほど時間が長く感じるよね』と言うものだけれど、夢物語みたいに幸福な時間は逆に精神を麻痺させるものだと俺は思う。
 筆記試験や面接も通過して明日から大学に通える身分になったにもかかわらず、何を食べても胸につかえた感じがするし、何処に出かけても何をしようと溜息ばかりであまり楽しくない。ただ時間がいたずらに過ぎていって、気付けば布団にくるまって目を閉じて次の朝が来るのを憂鬱に待つだけ。
 そしてなにより、移動したり何処かに足を運ぶにも制限がつく。母は俺に「好きな事をしろ」「行きたい場所があれば言え」と投げかけるけど、まさか毎回同じ場所、同じ人物に会いに行きたいと言えば流石に怪しまれるだろうから、俺はなるべく避けた。
 相手は生きる世界が違う、と感じたから。

 かつての弟子は会う度俺に瑕を消す治療を勧めてくる。
 額から左頬をまたぐこの瑕は鏡で見るとそれなりに目立つし、初対面の人間が俺を観察するとなればまずこの部分を気にかけるだろう。でも、他人を不快にするほどの傷跡でもないし、これはそのままでも良いと俺が言うと、きまってトランクスは肩をすくめて首を振った。
 俺のこの傷跡が醜いと感じているのか、過去を思い起こすのが嫌なのか…トランクスにはまだ問いただしていない。前者は無いと思いたいけど、まぁ確かに平和なこの世の中だ。物騒な傷跡の人間が大企業の社長の傍にいれば世間体だって宜しくないのは理解しているつもりだ。
 …最後に会ったのは、何時だったろう。
 ああ、そうだ。大学に願書を提出しに都まで行ったっけ。
 ただ会いたくなって、連絡せずに足を運んで、それから。
 秘書を従えて、スケジュールの確認をしながら、皺ひとつ無いスーツを着こなした彼。車から降りてくるのを見た俺は隠れて、声ひとつかけずに帰ったんだった。別に逃げる理由も無いのに、何故か俺は泣きそうだった。揺らいで溢れ出しそうなものを必死で胸の中に閉じ込めて、俺は走り去った。
 トランクスは、俺を受け入れてくれる。確信はある。
 昔も今も互いを想う気持ちは変わらないし、寧ろ前よりもっと絆は深まっている。会いたくて抱き合いたくて、正直こんな感情が自分にあるだなんて思わなかった。

 …考えてもみろ、彼は暇じゃない。俺だって進路を決めなきゃならない。
 特にトランクスは個人的な感情で時間を割けるほど余裕はないんだぞ。

 そう自分に言い聞かせてから左頬の瑕を撫でると胸のつかえと痛みが少し和らぐ。
 この傷跡を消したくないのは、こいつが彼と俺を結ぶ接点で、俺自身にとって勲章みたいなものだからだ。でも多分、トランクスには辛い思い出でしかないのだろう。
 トランクスは自分が足手纏いだったから俺が負傷してしまったのだと嘆いていたけど、俺は、トランクスだけは守れた事が嬉しかった。この左顔面に刻まれた瑕を見る度に、あの頃の小さな身体と温もりを思い出す。
 差し出した手と心を強引に叩き付け、勝手に死んだ俺。同じ時間を共にしてやれなかった俺が今更なにを望むというのか。トランクスは出来うる限りで俺に声をかけてくれているし、メールや電話もくれる。今度の週末は入学祝いをしようとPCメールが来た。ドメインから察するにおそらく仕事中に送ってきたのだろう。出来れば肉声が聞きたかったけれど、贅沢は言えない。
 …明日は少し早めに起きよう。まさか寝不足って訳にはいかない。

 〜02へ続く〜



Be paralyzed 02 〜トランクス編〜

 首筋から駆け巡る電撃と、脳内に潜む大男の荒々しい太鼓。
 要するに、肩こりと頭痛。PCはそんなにいじっていなかったから多分寝不足が原因だ。正直言うと早く自宅のベッドに転がって頭痛薬飲んで電気を消して意識を失いたいんだが、オレは月を眺めてパオズ山を目指していた。母さんには事情を話したから遅くなっても構わない。
 ずっと前に失い諦めていたあの人が再びこの世に戻ってきたという奇跡を噛み締めて、もう二ヶ月経つ。ただ、オレの記憶の悟飯さんよりもっと小さく幼さを感じてしまうのは、オレが悟飯さんの年齢を越してしまったからか。
 相手は22、オレは25。歳下と思うと複雑だが、いざ話してみると悟飯さんはしっかりしているし、頭もきれるし、この時代にもう馴染んでいるから心配はなさそうだ。現にあの人は、PCソフトの扱いも携帯の使い方も一度で覚え、着実に周囲に順応しているとチチさんが話していた。なんでも完璧にこなしてしまえるのは相変わらずでこちらとしても嬉しいが、オレは…複雑だ。

 悟飯さんは寝間着姿で、苦虫噛み潰したような顔でオレを迎え入れた。リビングに通されたオレはチチさんの差し出すお茶を受け取り「夜分遅くすみません」と謝罪する。チチさんは「トランクスさは若社長だし時間もとれねぇのに、寧ろ来てくれて嬉しいべ」と言ってくれたが気まずい。
「今、何時だと思ってる」
 そうですねぇ、とオレは頭を下げた。その途端、嫌な鈍痛がよみがえる。しつこい頭痛が眉間の皺を作っていたらしく、師匠は首を傾げた。
「どこか具合でも?」
 オレは首を振る。それより、と懐からラッピングされた箱を差し出して中身を見てほしい、と促す。外出の合間に色々寄ってようやく「いいな」と思えた腕時計で、スーツにも普段着でも使えそうなデザインだ。入学祝いの贈り物を受け取った悟飯さんはあまり表情を動かさず、静かに包装紙とリボンを折り畳む。悟飯さん、本当に嬉しい時はまばたきの回数が多くなるし頬が赤くなるから、オレにはよく分かる。
「…これ渡す為に、わざわざこんな夜更けに?」
 オレは、明日が役職会議で一日潰れる事を話した。
 すると途端に相手の表情が曇る。
 どうしたんだ悟飯さん。そんな暗い顔見る為に此処まで来たんじゃないのに。オレはテーブルに突っ伏し軽く呻くと、頭痛がひどい事を伝えた。
 別に優しい言葉を期待していた訳じゃない。迷惑はかけられない。相手も、明日は入学式を控えている。それに元々悟飯さんは淡白な人だから、時折会う程度が丁度良いに違いない。
 オレはそろそろ帰る旨を伝え、かけてあったコートを羽織り玄関口まで向かうと控えめな声で「ありがとう」と言われた。見ればその両手に水の入ったグラスと薬が握られている。オレは礼を言ってそれを受け取ると、喉に流し込んだ。

 途中まで見送る、そう言って寝間着の上にダッフルコートを着た悟飯さんがオレの真横をさくさくと歩く。今晩は特に冷えるようで、呼吸する側から純白のもやが浮かび泳いでいく。舞空術で飛び立つのもいいけど、もうしばらくだけ、こうして悟飯さんの顔を見ていたい。触れた指先が氷のように冷えきっていたからその手を握ると一瞬、息を飲む音が聞こえた。
 林を抜け、公道に辿り着いた辺りで悟飯さんは自分の顔の瑕について訪ねてきた。「このキズ、無くなった方がいいだろうか」と。
『悟飯くんは男の子だから気にしていないだろうけど』
 うちの母さんは色々な知り合いがいる。その中には人造人間たちによって傷ついた人達の傷跡を元通りに復元する外科医も含まれていた。元はと言えばオレがついていったばかりに悟飯さんは負傷してしまった。その償いが出来れば、と持ちかけた件が悟飯さんを悩ませていたようだ。オレは自分の気持ちを正直に打ち明けると、大きな目を更に見開いている師匠の勲章に唇で触れてみた。
 こういうのは嫌ですか? そう聞くと悟飯さんは目と顔をオレから逸らして首を振る。ならそんな顔をする事ないのに、と軽く落胆しかけていたところに柔らかな体温がオレの唇を塞いだ。あたたかくて甘い感触。絶望しかなかった時代に慰め合うように繋がったあの頃の悟飯さんを思い出した。
「俺、キミの傍にいても、良いのかな…」
 どうしてそんな事を? そう訪ねると悟飯さんは背を向けゆっくり去っていく。そのまま行かせたくなくて、ぎゅっと抱き寄せると、びくんと硬直した身体がぶるぶる震えていく。
 しがみつく悟飯さんの背中をオレはさすり、頭痛はいつしか治まっていた。

 〜END〜





ハイ。終わりです。このラストもそうですが、トランクスが悟飯さんにナニを言ったのかとかは読み手様のご想像にお任せします。
悟飯さんは結局トランクスと別れちゃうのか、それともずっと一緒にいようと決意したのか…そのどちらで解釈出来るようにしてみたつもりです。また女々しい師匠になってしまったのが唯一の汚点ですが(苦笑)。
また今度、続きを書けたら書きます♪ もちろん寸止めでね…ッ!!(←でも女性向けなんだよ)
by synthetia | 2013-01-06 11:55 | 駄文 | Comments(0)