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高宮あきと云う奴によるDBトラ飯ブログです。pixiv(9164777)もやってます♪主に女性向けなので、嫌悪感じる方はご遠慮下さい(汗)。


by synthetia

トラ飯駄文 その一

ケータイで書き進めている未来トラ飯駄文、第一話です。
甘々というにはまだまだですが、なんかこう『夏休みSP』的な感じにはなったかなぁと自分的には思っております。ほのぼのしつつ、切ない感も醸し出せたらなお嬉しいんだけど…(照)。

というか、実はまだ書き終えておらず、
したがって不定期連載となりますが、お暇つぶしにお付き合い頂けると嬉しいのですv

シリーズ名は『きっと、あなたに』です。








 …用事を済ませて帰ってみれば、まるでベタなドラマのような事態。

「あなたは、誰ですか?」

 ぽかんとしたオレ。
 その台詞を言った戸惑い顔の当人。

 なによりも、

「これ、ドッキリじゃないからさぁ」

 悟飯さんの背後から姿を表した我が母はヤケクソ顔で「ヤッホー」と手を振りオレに飛びついて「遅いわよぉ」と詰った。









 第一話『きっと、とりもどす』









「一時的な記憶喪失…というところでしょうか」

 権威がどうとか云う偉そうな大学病院の玄関をバックに、オレは無責任な医者の手渡した処方箋を右手に、左手は戸惑い顔のまま俯いている悟飯さんを引っ張っている。当人は意外としっかりしていて、パニックになるどころか自らの症状を簡潔に告げ、医者を驚かしていた程で。
「…あの、今日はボクの為に、色々と有難うございました」
 悟飯さんは自分の事を『ボク』と言い、オレへと頭を下げた。
「ここまでついてきて下さった上に、病院の診察代や色々お世話になってしまって申し訳ありません。でもボク、どうしてこんな事になったんでしょうか…」
 見覚えある顔が、まるで途方に暮れた子供のように弱々しい。悟飯さんはもう一度オレの顔をじっと見つめると「ボク、どうしたらいいんでしょう」と不安を露にする。
 …うん、どんな状況でもまずは地に足をつけ落ち着かなくては。
「悟飯さん、取り敢えず何か食べましょう」
「何かを、食べる…?」
「そう。晩ご飯を食べるんです」
「晩ご飯……?」
 オレは目をパチパチする悟飯さんに力強く頷いてみせる。
 そうだ。まずは腹を満たしシャワーを浴びて、一日の疲れをベッドで癒さなくては人間は余計に追い込まれる。
「さっき、病院行く前にいた場所、憶えてます? あのマンション、オレの別荘みたいなものなんです。悟飯さん、オレと貴方は昔からの知り合いで、とても仲が良かったんですよ」
「…ボクと……えっと、あなた、は…」
「トランクス、です」
 オレは自分を指差し、名を告げる。
「記憶喪失って言ったって、お腹は減るでしょう? それに、慣れない事の連続だ。まず貴方がするべき事は、ゆったりくつろいで休息をとる。そうでしょう?」
「…はい。実はボク、さっきから凄くお腹が空いていて…あ、」
 合図のように鳴りだした腹部を押さえ、悟飯さんは頬を染めて「えへへ」と微笑んだ。
「よし、そうと決まればマンションに向かいましょう。今晩は腕をふるって特製のオムライスにしますよ。ソーセージとポテトも添えて、デザート付きでね」
 この言葉に悟飯さんは「はいっ!」と頷いた。






 オレと悟飯さん二人がマンションに戻ると母が待っていた。
 まだ夜の七時。こんなに早い時間帯に夕飯をとるだなんて久し振りだ。

 リビングのソファーに座った悟飯さんは周囲をきょときょとと見渡しては首を捻り、心細そうに身体を縮こまらせ殻に閉じこもっていた。そんな彼をリラックスさせようと母も色々話しかけたのだが、言葉のキャッチボールは上手くいかず、悟飯さんは一言二言ぽつりぽつりと返すのみで、まるで引っ込み思案な幼い子供のような仕種で黙り込んでしまう。
 それでも、夕飯のオムライスとライムゼリーは残さず食べてくれた。満足そうに息をついて「ご馳走さまでした」と手を合わせるところは以前のままだ。

 空腹が満たされ安心したのか、急にうとうとしだした悟飯さんにシャワーの使い方を教え寝間着を渡すと「本当に有難うございます」と、ペコリとお辞儀される。あまりに可愛くて抱きしめると悟飯さんはビクッと震えてオレを見た。
「ごめんなさい、つい」
 謝るオレに悟飯さんは「大丈夫です」と返し、バスルームへと向かった。
 

 そして、当人がいない合間にオレは母に病院での結果を報告した。
「悟飯くん、本当に『記憶喪失』だったんだ…」
 母さん曰く、
「いやもうアタシが訪ねていったら悟飯くんったらソファーでグッタリしてるんだもの。ビックリして起こしてあげたら『此処はどこ、あなた誰ですか』なんだもの〜!!」
 …という訳だ。
「ね、ね、それでトランクス、お前昨日まで悟飯くんと一緒に過ごしてたんでしょ? なんかそういう兆候みたいなの、あった? 頭痛い、とか、どっかにぶつけた、とか…」
 これまで記憶をひっくり返すが、そんな異状は何処にも無かったと思う。
 オレは首を横に振る。
「とはいってもオレ達、週末しか一緒にいない訳ですから、悟飯さんが何処で怪我をしたとか、あまり行動は把握しきれていないんですよね。でも、見た限りじゃ元気そうでしたし、今朝だって『このまま大学行くから』って台所片付けていましたよ。全然、普段通りでした」
「ふ〜ん…そっか」
「医者の見立てでは『過労あるいは精神的なダメージによる一時的なもの』らしいと云う話なんですがね。…悟飯さん、結構無茶ばかりしていたみたいですし…慣れない事の連続でしたから、疲れがたまってしまったんじゃないでしょうか」
「だとしたら悟飯くんは一旦、実家に戻した方がいいわよねぇ」
「…はい。記憶が回復するまでは当面、オレは顔出さない方が良いかもしれないですよね」
「それでお前が辛くないなら、だけど」
「構いませんよ。…だって悟飯さん、オレと過ごしてきた事も、全部、忘れてしまったんですから…」

 知能、生活に関わる情報、自分の名前、生年月日。
 これらは無事パスしながらも、悟飯さんの記憶はほぼ初期化されていた。
 ———カメハウスで初めて母さんやクリリンさん、武天老師様と出会った事も、戦いの日々や仲間達の顔も全て、綺麗さっぱり忘れてしまったのだ。
 性格そして振る舞いから察するに母は「多分四歳ぐらいじゃないかな」と推定してきた。そんなまさか、言葉遣いもしっかりしているし、病院でだって普通の雑誌を読んでいて、医師に自分の症状を明確に告げていたのだ。
「あぁらぁ、あの子、昔っからああいう感じだったのよ。大人に囲まれていたし、四歳だった頃からチチさんに中学校レベルの勉強させられていたからね」
「だ、だけどそんな、悟飯さんはもう、立派な大人ですよ…?」
「アンタは知らないだろうけど、小さな頃の悟飯くん、すごく引っ込み思案で人見知りで、慣れるまでなかなか話も出来ない子だったんだ。今の悟飯くん、あの頃のちいちゃかった悟飯くんに、そっくりよ」






 事情を説明すると翌朝にはチチさんが駆けつけ、悟飯さんは実家に戻された。
「うちの子がご迷惑かけたみてぇで申し訳ねぇ。ほれ、悟飯ちゃん、帰るだぞ」
 別れる間際、悟飯さんは何度もオレに向き直っては何か言いたげにしていた。それでも血の繋がりには勝てない。観念したオレは悟飯さんに向けて「また何時でも遊びに来て下さいね」と、手を握った。とても汗ばんだ手だった。
「トランクスさん、ボク……」
「何も怖くありませんよ。…悟飯さんのお家は、とっても綺麗なお花も咲いていますし、豊かな自然に包まれた素晴らしい場所なんです。優しいお祖父さんとお母さんの元で過ごせばきっと何もかも上手くいきます」
「はい、トランクスさん」
 悟飯さんはニッコリ笑ってみせると、母親のチチさんに「お待たせしました」と、ペコリと頭を下げた。
「さぁさ、家さ帰ったら悟飯ちゃんの大好きな物たらふく食べさせてやるだよ。勉強が遅れちまうのがちぃと勿体ねぇだが、おめぇならすぐ取り返せる筈だべ」
 見送るオレに、息子の手を引いたチチさんは何か訴えたげな目で足を止めた。
「トランクスさ、お世話になっただ。ところでおめぇ、こないだの『お見合い』の話って、どうなっただか?」
 それは形だけのものであり、相手もオレも互いに本命のいる身だ。家業の付き合い上(※先方の母親が乗り気だった)どうしても避けて通る事が出来ず、敢えて一回、歓談して茶を飲んでそれきりなのだが。
「まぁ、全体的に悪くなかったですし、相手のお嬢さんもオレと趣味があって話も弾みましたけどね…いや、互いに家業で忙しい身の上ですから、今すぐどうこうと云うのは…」
「…そうけ。ま、トランクスさはまだ若いし、イケメンだから、その気になりゃあ幾らでも綺麗な嫁っこ貰えるだよ。…あ、いけねぇ長々話し込んじまっただなぁ。ごめんな悟飯ちゃん、疲れただか?」
 母親の問いかけに悟飯さんはぶんぶん、と首を振った。
「さぁさ、じっちゃんも家で首長くして待ってるだ。それじゃ、お邪魔しました」
 かくして親子がジェットカーで都を去ってしまうと、取り残されたオレは胸の痛みと虚しさを堪え、日常と家業に戻った。優しく頼もしくそれでいて時折甘えたがりの恋人は暫く戻ってこないのだ。…もしかすると、一生。
 ———くそ、医学は一体なにをサボっているんだ…。






 それから、数日後。
 新作を検討する会議で遅くなり、どうにか会社から戻ってきたオレは心底驚かされる事となった。

「トランクスさん…」
 ボロボロの格好で、ドアの前に座り込む悟飯さん。
 靴ではなくサンダル履き、簡素なシャツにジーンズ姿。髪はぐしゃぐしゃになり、頬や腕には泥がこびりついている。
 慌ててオレが駆け寄り抱き起こすと、全身汗塗れだ。それに細かく震えている。長い間、何も摂取していないのだろう…早く休息をとらせないと駄目だ。
「…家の方々には断って来たんですか?」
 悟飯さんはビクッと震え、オレを見上げた。
 …しまった。これでは詰問じゃないか。
「此処に来る事、チチさんには何も言っていないんですね?」
 悟飯さんはコクン、と頷いた。
 なんて事だ…。オレは頭を抱え、怯えた表情の彼を観察する。このままでは家出扱いになるぞ。
 それに、チチさんはやや心配性で過保護なところもあるのだ。記憶喪失の息子が行方不明となった日には、最悪、警察さえ呼びかねない。
「…どうやって、此処まで来たのですか?」
 オレの問いに対し悟飯さんは「…バスと電車と、歩き」とだけ答えた。
「じゃあ、とてもクタクタですよね。…よく、迷わずに来られましたね。凄いですよ」
 そう言ってオレが頭を撫でてあげると、悟飯さんは頬を赤くして「はい」と頷いた。途端、彼の腹がぐぅっと鳴りだした。
「それじゃ、中に入って夕飯にしましょう。さ、悟飯さん、こっちこっち」
「…トランクス、さん」
 ようやくオレの名を呼んでくれた悟飯さんがクイクイ、と服の端を引っ張り不安げな眼差しでこちらを見上げる。
「あ、あの。……きょ、今日、ボク…」
「ええ、泊まっていって大丈夫ですよ」
 意識して微笑んでみせれば、相手はとびきりの笑顔で飛びついた。
「ほら、だからまずは身体をキレイにしましょうね。さぁ悟飯さん、中に入って」
「はいっ!」
 なんて無邪気で可愛い笑顔なのだろう。
《しかしどうして、実家から飛び出してきたんだろう…?》
 気になりはしたが、まずは、相手を落ち着かせてから事情を聞くとしよう。
《相手は子供なんだからな》
 しかもオレの事なんか、ひとかけらも覚えていない小さな子なんだ。


 その晩、オレは彼の為に特製のカレーハンバーグスパゲティと、カボチャのデザートサラダをこしらえた。急拵えで、たったそれしか作ってあげられなかったにもかかわらず、まるでとびきりのご馳走かのように頬張る彼を眺め、オレもまた空腹だった胃を満たした。
 シャワーを浴びパジャマに着替え、おずおずしている彼と並んでテレビを観て、少しずつ話をした。
 曰わく、彼は実家にいても何故だか落ち着かない、と云うのだ。
「おかあさんは優しいし、おじいちゃんも色々良くしてくれます。おうちも綺麗であたたかくて、山の景色も全部素敵で絵本みたいな場所なんです。でも…」
「でも?」
「…なんだかだんだん、胸の中に、『このままでいちゃいけない』『早く行かなくちゃ』って気持ちがボクをずんずん押してくるんです。何がなんだか分からないけどムズムズして…ボク早く行かなくちゃ、ゆっくりしちゃダメだ、って…」
 かつての悟飯さんは戦い詰めの日々を送っていた。
 そんな一人息子を案じる母親のチチさんはよく悟飯さんを引き止めていたというし、人造人間が現れた頃には家出同然で戦闘に明け暮れていたのだから、これは相当な確執があったに違いない(今でこそ仲良いけれど)。
「それにね、トランクスさん」
 口元に手を当て、ほぅっと息をついた悟飯さんはもう一言、付け加えた。
「ボクね。…トランクスさんの傍が一番、落ち着くの。ボク、もうちょっとだけ、此処にいたい」






 落ち着いた辺りで悟飯さんを寝室に連れて行き眠らせると、まだ残っていたメールチェックと、明日以降の会議内容に目を通し、書類作成をする。
 眠気は無く順調に進み、それでも軽い倦怠感に目を閉じていたオレの元へ悟飯さんがやってきた。枕とタオルケットを両手に、眉を八の字にしている。
「どうしました?」
「…ここで寝ていいですか?」
 枕を抱きしめながら彼はソファーを指差した。良いですよ、と招き入れると悟飯さんは「怖い夢見ちゃって」と、恥ずかしそうに告白した。
「お仕事、邪魔してごめんなさい」
「大丈夫ですよ。さぁ、いらっしゃい」
 彼はおずおずとオレの傍らにくるとペコリ、とお辞儀をしてから、ソファーに転がった。いつも力強い光を宿していた目は、あどけない子供のそれだった。それでも身体は大人のそれなのだから、ソファーに横たわるには窮屈そうだ。
 だが、悟飯さんは満足げにうっとりとした表情で目を閉じると軽い寝息をたて始めた。
 そっと近付き、浅く開いた唇にオレはそっと触れる。ほんの数日前までは『恋人』だった人の声や濡れた吐息を思い返すと、今ここで全てを放ちたくて堪らなかった。…なんでいきなり、こんな事になるんだ…。
《いかんいかん、先はまだ、長いんだ…》
 優しく、穏やかな日々を送らせてあげなくてはいけない。
《かつてのこの人が過ごせなかった日常を…取り戻してあげなくては…》
 そうとも。よくよく思い返したら悟飯さんは子供らしい時間を過ごした事が無い筈なんだ。五歳で死闘を、それから立て続けに襲い来る強敵を相手に戦い続けて、父親である悟空さんを亡くして、母親のチチさんにも甘え縋る事さえ出来ずに、たった十歳で世界全てを担わされて…。
「悟飯さん、大丈夫だよ。オレはいつまでも…貴方の傍にいるから」
 すうすうと寝息をたて眠る悟飯さんの髪を撫で自分に言い聞かせていると、突然チャイムが鳴る。


 インターフォンの画面を確認してみればそこには悟飯さんの祖父、牛魔王さんがいる。
 床の軋む音に振り返れば、何時の間に起きたのか悟飯さんがオレにしがみ付き、無言でぶんぶん、と首を振る。
『おぉいトランクスさ〜! 夜分遅くに申し訳ねぇが開けてくんろ!』
 スピーカーを通し、巨漢である牛魔王さんの大声が響き渡る。
 オレにぎゅっ、としがみ付き、ブルブルと震えだした悟飯さんの頭をそっと撫で、オレは「大丈夫ですよ」と、微笑んでみせる。
「…大丈夫。悟飯さんは何一つ心配しないで寝ていて下さい」
 悟飯さんはこくん、と頷くと、寝室に駆け込みドアを閉めた。

 オレは玄関に向かうと覚悟を決め、ドアを解錠した。
 そこには心底困ったと言いたげな牛魔王さんが肩を落とし、立っていた。






 …To be continued…



ハイ。腐りきってただれた妄想駄文シリーズ第一弾です。
(そろそろ支部がパンク状態になったのでのぅ…ここで連載しますのじゃ…)

ベタな記憶喪失ネタですが、きちんと勉強していないので、もし間違っていたならごめんなさい。
by synthetia | 2014-08-24 12:39 | 駄文 | Comments(0)