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高宮あきと云う奴によるDBトラ飯ブログです。pixiv(9164777)もやってます♪主に女性向けなので、嫌悪感じる方はご遠慮下さい(汗)。


by synthetia

トラ飯駄文 その六

『きっと、あなたに』の最終話。
色々グダグダ長かったですが、トラや未来さん書くの楽しかったですv

Web拍手有難うございます♪ 励まされました〜v







 ———想いが通じ合っているのであれば、一緒に暮らしたい。

 大事な問題だったし、避けて通るつもりもなかった。
 しかし家業に追われていたオレと、学生として人生の再スタートをきったばかりの悟飯さんを取り巻く環境はあまりにも遠く隔たれていたし、彼には母親と祖父がいた。しかも母親であるチチさんは、一人息子の悟飯さんを溺愛している。悲惨な死を遂げた筈の息子が再び甦り戻ってきたのだから、手放したりする訳が無い。

 




 ———電話をしてから向かった先。
 自然に囲まれた悟飯さんの実家で、オレは想像していた通りの扱いを受け、灼けつく頬を押さえ床を見ている。
 遠く、向こう側から聞き覚えのある声がオレの名を、呼んだ。

 出ていけ。もう二度とうちの息子の前に姿を現すな。

 …要約すると、そういった意味合いの罵声を浴びせられ、更にオレは頭から水をかけられて、ぽつぽつと出来上がる水溜りを見下ろしている。
「…チチ! おめぇいくらなんでもこれは、やり過ぎだべ…!」
 とてもとても大きな何かが、床に突っ伏したオレの両肩を掴み、立たせてくれた。身体の傷ではなく、精神のダメージが目前の景色さえ霞ませる。
 よろける足元とがくつく膝に力を込め、ようやく立ち上がる。オレを支えてくれていたのは牛魔王さんだと知る。
「ふんっ、ようやく立ってくれただか。…ほら、とっとと出ていくだ! んでもって悟飯ちゃんは二度とこっから出さねぇだ! この子には真っ当な道歩かせて、しかるべきとこから嫁っこもらって幸せになってもらうだよ…」
 台所から持ってきたらしい壷に手を入れ塩を撒いてきたチチさんを、悟飯さんが「やめて」としがみ付き、その動きを止めていた。しかしチチさんはその制止を無視し、前へ前へと進み、渾身の力でオレ目掛けて塩を投げつける。いかに力を抑えているとはいえ、あの悟飯さんを引き摺っている様子は恐ろしい。
「えぇい、放せっ放すだよぉ…! こ、こんな、よくも…よくも、えぇい…!!」
 チチさんの形相は、鬼そのものだった。子を想う母の、必死の抵抗だった。









 第六話『すべてを、あなたに』









「チチのやつが無礼をはたらいて、本当に、すまねかっただ…」

 床に頭を擦り付け土下座を続ける牛魔王さんにオレは「やめて下さい」と、何度も何度もその身体を起こそうと試みた。しかし彼は「オラの躾がなってなかったばかりによぉ」と繰り返すだけだ。
 あれからチチさんは急に気を失い、自室のベッドで休んでいる。悟飯さんは、チチさんの傍に付きっきりだ。
「あいつはなぁ…ほんに悟飯に甘えてるんだ。まんず、あの子が何でも出来て、優しくて良い子なだけに期待しちまってよぉ…そんで『あれもこれも』と望めば、悟飯も、チチの期待に応えちまう。それを分かっていながら、オラも、悟飯の優しさに甘えちまっていただ。…あの子だって色々遊んだりしたかっただろうし、本当に行きたい場所もあっただに…」
「いえ…それは少し違いますよ。悟飯さんは本当に、お二人が好きだった。だからこそ、空白の時間を取り戻したくて頑張っていたんです。それは否定しないであげて下さい…」
「トランクスさ。…こう言ってはなんだが。前々からオラはこういう予感がしてたんだっぺ」
「え………」
「多分、チチのやつも勘づいていた筈だ。…おめぇを見る悟飯の目は、昔馴染みの、友人を見る目付きじゃねぇ。恋する者の、目だ」
 まぁ間違いであってほしかったんだけどな、と付け足して、好々爺は笑う。
「悟飯が記憶喪失になって、ちっちゃな子供みてぇにまっさらになっちまったのには驚いたが…そんでも人の『想い』ってぇのは尊いもんだな、トランクスさ。あの子は、オラやチチの庇護よりも、おめぇという茨の道を選んじまったんだ。そこまで想われるってのは幸せなもんだが、逆に、これからの人生を縛る鎖にもなるかもしんねぇ。なぁ、トランクスさ。おめぇ、本当に、悟飯で良いのか。…あの子はおめぇさんと同じ『男』なんだべ?」
 後悔しても戻れまいぞ、今なら引き返せるぞ、と、巨漢は問う。
 しかしオレとて、昨日今日で悟飯さんを選んだ訳ではない。
「…性別も環境も関係なく、あの人だから欲しいんです。それだけは譲れない」
「よう言った。ならトランクスさ、悟飯がこのまま記憶喪失のままでもやはり、同じ台詞を言えるだか? …これまで共に過ごした数年間を忘却の彼方に葬られても、悟飯への想いを誓えるだか?」
「その覚悟で、此処まで来ました。なにがあっても、オレはあの人と一緒にいたい…」
「いい目だ。ならばオラだけでも、おめぇと悟飯を祝福してやる。…トランクスさ、此処はいいから、悟飯と一緒に西の都へ帰るだ。チチはきっと、オラが説き伏せる」



 昼を過ぎ、午後の日射しが木々を激しく照らす頃になっても、事態は変わらない。
 意識を取り戻したチチさんは自室に閉じこもったまま、誰の言葉にも耳を貸そうともせず、悟飯さんの用意したお粥も受け付けずに放置したままだ。
「もうええだ悟飯。後はじっちゃんがどうにかすっから」
 祖父の言葉に悟飯さんは頑固に首を横に振る。
 彼は、母親にこそ分かってもらいたいのだし、赦しを得たいと願っている。他の誰でもなく、自分を此の世に産んでくれた、ただひとつの存在にこそ認めてもらいたいだけなのだ。
「おじいちゃん、トランクスさん、ごめんなさい。…もう少しだけ、いいですか?」
 オレと牛魔王さんは客間に戻り、悟飯さんを待った。
 それから彼はずっと日が暮れてしまうまで、廊下に座ったまま、母親の名を呼び、語りかけていた。———応答も、扉が開く事も一切無かったのだが。

 完全に夜の帷が訪れた頃、耐えきれなくなったオレは、悟飯さんの元へと向かった。光の射さぬ薄暗い空間を抜けると、悟飯さんはまだ母親の部屋の前で頑張っていた。オレの足音に反応して振り向いた彼は「すみません」と頭を下げた。

「…あのね、おかあさん」
 固く閉ざされた扉の前で悟飯さんは言う。
「僕は、昔からひどい息子だったと思っている。あなたの期待や要望に何一つ応えられなかったし、身勝手ばかりして、大事な時にはいつも、あなたを置き去りにしていたから。…だからさ、生き返った時、僕は決めたんだ。今度こそ、おかあさんの期待に応えよう、親孝行な息子になろうって」
 でも結局駄目だったね、と寂しそうに微笑んで、ドアに背中を預けた悟飯さんと目が合った。
「親不孝で、我儘ばかりで、迷惑ばかりかけてごめんね。だけど俺、やっぱり馬鹿だから、本当の気持ちをごまかせなかった。好きな人のそばにずっといたいし…今の俺が一番したい事も、それしか浮かばないんだよ。ごめんね、こんな息子で。孫の顔も見せてあげられないよね…。でも、これだけは分かって。俺はあの人じゃないと、駄目なんだ。他の誰でもない彼がいないと、何も意味を成さないんだよ…」

 …また来るね。
 そう言い残し扉に向けて一礼した悟飯さんはオレの元へ歩み寄り「今日はもう帰りましょう」と、微笑んだ。そんな辛そうな笑顔をさせるぐらいなら此処へ誘わなければ良かった。…オレの浅はかさでまたこの人を傷付けてしまったのだ、と胸と胃がじくじくと傷みだす。
「トランクスさん、そんな顔しないで? …ほら、今晩は僕がとびきり美味しいの作りますから、元気出して」
 自分が辛いのに、あえて朗らかな笑顔でオレを励ましてくれる。勇気をくれる。
 だが、少し顔色が悪かった。薄暗さで分かりにくいが、悟飯さんは額に汗を浮かべている。頭痛の発作かもしれない。
「…そうですね悟飯さん。牛魔王さんはオレ達の事認めてくれましたし、伝えなければならない事は全部伝えたんだ。…今日はもう帰って、ゆっくりしましょう」
 励ますように、その全身をぎゅっと抱きしめる。そうしていると悟飯さんの両腕も、オレを包み込んでくれた。



 パオズの森林を徒歩で抜け、公道に差しかかると街灯で照らされた悟飯さんの苦しそうな顔が横にある。どうか少しでも楽になれば、と、預かった頓服の頭痛薬を差し出し、飲ませた。これでは、舞空術は無理だ。
「悟飯さん、ちょっと下がってて」
 悟飯さんは頷いた。そしてホイポイカプセルからジェットカーを出し、ゆったりした後部座席に彼を乗せ、オレは運転席に。エンジンを起動させ、上空へ向かう。
「西の都まで、まだちょっとかかりますからそれまで寝ていていいですよ」
「ううん。…随分楽になったし、少し、外の景色を眺めています。それより、トランクスさん。今日は…有難う、ございました」
「…結局、チチさんには、認めてもらえませんでしたね…」
「仕方ないです。だって、いきなり息子が同性の相手を『好き』だなんて言っても受け入れ難いでしょうしね。でも、おじいちゃんには、許してもらえたし…あの二人に打ち明ける事が出来たのは、トランクスさんのおかげです」
 それにこれを見て、と、悟飯さんはオレの真横にやって来て、冊子らしいものを差し出した。それは一目見て、通帳だと分かった。
「これ、僕の通帳なんです。…小さな頃からずっと、使う事のなかったお金がここに貯められている。僕が、あの家を飛び出してからも、僕が死んでしまってからも、おかあさんもおじいちゃんもずっと使わずにとっといてくれたんです。…僕、いらないよって言って、二人に預けたんですけど…おかあさん、僕の渡した生活費もここにみんな、貯金してくれていた…」
 悟飯さんはよく、単発や深夜のアルバイトで稼いだ給料の殆どを「家計の足しに」とチチさんに手渡していたのだ。けれど彼女はそれを使わなかった。一人息子が将来困らないようにと、母親は息子名義で貯金し続けていたのだった。
 その口座には、数年は余裕で暮らしていけるだけの金額が蓄えられていた。しかし悟飯さんは「いつかこれは母に返します」と答えてみせた。
「おじいちゃんは僕にこれを手渡してくれたけど、本当は、おかあさんから貰う筈だったものですから。…それに僕は、おかあさんに、トランクスさんと僕の事、祝福して貰いたいから。そしたら今度こそ、この貯金を渡すんです。僕の事はいいから少しでも楽をしていいよ、って。それで時々、ブルマさんやおかあさん、おじいちゃんとトランクスさんと、みんなで出かけたり、お茶出来たらいいな。…それが僕の、夢なんですよ」
 そう言うと、悟飯さんは目を輝かせて微笑む。
 いつかそれが『夢』などではなく『近い未来』という現実になれば、その笑顔は更に幸福の色で満ちるのだろう。頭痛さえ忘れ、無邪気に語る悟飯さんの頬に軽くキスするとオレはこう告げた。
「…悟飯さん。もう、いいんですよ」
「…え…?」
「『忘れたフリ』。もうしなくて大丈夫ですから。そうなんでしょ、悟飯さん?」
 それを証拠にほら。…相手は頬を火照らせ、あっという間にトマトみたいに染まる。ガチガチに強張って両手で顔を覆うと「…気付いてたのか」と、零す。
「ご、ごめ……そ、の……」
「謝らなくていいんですよ。その…言い出すタイミングが、難しかっただけですよね」
 何時から記憶を取り戻していたのか、と問えば、悟飯さんはか細い声で「…昨日の夜から」と答え、顔を隠したまま、そろそろと後部座席へ戻っていった。

『…いつもトランクスさんは忙しそうで、たまに早く帰ってきてもお仕事しているし、遊びに行っても、泊まりに行った先でも、ずっと頭痛そうにしてたし』

 ———あの会話から違和感を覚えていたのだが、敢えて触れずにいたのは。
「オレとしてはですね…その、貴方が、ご自分の気持ちを誤摩化さず、正直に打ち明けてくれるのが嬉しかったし…。正直、この数週間は新鮮でした。貴方という人間がよく分かりましたから」
 記憶戻ったでしょ? だなんて告げたらきっとまた、殻に閉じこもって、一人で悩んでしまうに違いない。それに確証も無かったから黙っていただけだったのだが…。
「ねぇ悟飯さん。オレ、なるべく時間作りますから、またチチさんの所、行きましょう? 今度はウチの母さん連れて、一緒に説得するってのはどうでしょう」
「……め、迷惑だろ、そんなの。仕事、忙しいなら、いい…」
 真っ赤な耳までは隠せず、相変わらず顔を覆ったままの彼は小声で返す。もしこれがジェットカーでさえなかったら、全部放り出して、抱き寄せてキスして、どうにかしてしまいたいところなのに。
 オレは話題を切り替え「頭痛はどうですか?」と、問う。悟飯さんは「もう平気だ」と顔を上げ、頷いてみせた。
「…まぁ、事が事でしたし、まずは母さんに悟飯さんの回復を報告しなきゃいけませんね。でもその前に今日は、色々言わせてもらいますよ? 昨晩からずっと演技をし続けてオレを騙した罰も与えたいですし」
「…罰、か。いいだろう。この数週間、キミには本当に迷惑かけたからな」
 肩を落とし、心底申し訳なさそうに項垂れる悟飯さんにオレは「例えば、こういう罰は如何でしょう」と、続ける。
「悟飯さんには、オレの作った夕食を食べてもらって、オレには文句も言わず、オレの好きなDVDを一緒に観賞していただきます。シャワーもベッドも共に付き合って下さい」
 オレの提案に目を丸くした悟飯さんだが、次第にそれは和やかなものへと変化していく。
「…それ、昨日と殆ど一緒だろ」
 苦笑混じりに詰られ、オレは「ほら文句が出た」と口を尖らせてみせる。
「言っておきますがこれは『罰』なんですから、口答えしちゃダメですよ? あと、DVDがどんなにつまらなくても文句は言いっこなしです。分かりましたね?」
 努めて平静を装いつつ発言すれば、綻ぶ花のように彼が笑う。
 予感が現実となると人間とは調子の良い生き物で、オレは内心舞い上がってしまいそうで操縦する手と身体がその場にとどまっているのが不思議なくらい。
 記憶が戻らなくても、思い出が無くなっていても良いとは言ったものの、いざ本当にオレの『悟飯さん』が戻ってきたのだと知るや、視界は歪むし、涙腺が勝手に活動し始める。悟飯さんが復活した時もそうだったけど…もういい加減オレは大人なのに、どうしたんだろ…。
「トランクス、ごめんな。…今まで本当に、ありがとう」
 不意に覆い被さってきた優しい両腕に包まれ、オレは、喉が軋むまで泣いて泣いて、悟飯さんに「今までごめんなさい」と詫びた。もう、操縦どころではなかった。
 涙腺が崩壊したオレの代わりに、悟飯さんが運転席に座ってくれた。そして彼は前を向いたまま、こう告げた。
「これからも宜しく頼むな、トランクス」
 くるっと振り向き、器用にオレの頭をわしゃわしゃと撫でてから操縦へ戻る。
 これから帰る場所は二人の拠点、いつも交わしていた『また今度』はもう無くなるんだ。悟飯さんにはもっともっと本音を出してもらうし、気兼ねなく喧嘩もしよう。
 今まで打ち明けられなかった、不満のあれこれ等も共有して。そして互いの全てを分かち合えたら、と願う。
 …いや、そうしよう。この人となら、それが出来る。 

 




 記憶を取り戻した悟飯さんは、病院で再び精密検査をうけ『問題無し』との事だった。そして二人でうちの母親に今後の方針を報告すると「あっそ」と、やる気の無い返答をくらった。
「そんなの今更でしょ。遅過ぎたくらいよ」
 実の息子の頭は叩くくせに悟飯さんには猫撫で声で「ね〜え?」と、同意を促すものだから、オレは歯ぎしりして母と悟飯さんを睨む。二人は、プッと吹き出していた。
「悟飯くん、今更だけど、この単細胞バカをよろしく頼むね」
「ええ、大丈夫です。言う事きかなくなったら尻叩いて引っ張りますから」 
 …あ、あのなぁ…二人とも、オレをなんだと思っているんだよ…!


 一応、見合いもした過去の『婚約者』からも祝辞を述べられた。
「おうおうトラ、おめでと〜!! ついでにゴハンさん、記憶戻って良かったねぇ!」
 そして彼女はオレと悟飯さんの為にと、ワイン数本を贈ってきた。うち半分が『シャトー・ディケム』だったのが笑えない。しかし下戸の悟飯さんにとって唯一飲める激甘ワインだったので、彼はニコニコ笑って喜んでいたから良しとする。
「ねぇ、ゴハンさん。もしトラの事で悩んでいたらアタシにも相談しなよ。ブルマおばさんと一緒にこいつとっちめてやるよ」
 彼女の軽口に対し、悟飯さんは苦笑しながら「アマネさん、よろしくお願いします」だなどと、酷い冗談を返してから二人でニヤリと笑う。
 急に結束深まった周囲にオレ一人が取り残され、最近では、帰宅すれば我がマンション、母とアマネが鍋を突っつき酌をし合う中、悟飯さんが食材を刻んでいる図が定着している。酷い時は、悟飯さんの学友たち数名もプラスされた状況下で、泣く泣くオレはベランダに逃げ込んで寂しくビールを啜るのだ。


 ———チチさんからは、まだ何の応答も無い。
 オレは仕事の合間を縫い電話をかけたが、取りつく島も無かったし、また悟飯さんも同じだと言う。牛魔王さん曰く「こんところメシは食うようになったし穏やかなんだが」と云う話だ。
 だが、変化もあった。オレと悟飯さん二人で選んだ冬用のカーディガンを突き返してこなかったのが幸いだ。しかも、チチさんの名前で小包が届いたので開けてみたら、小さな瓶に詰めた数種類のジャムが色とりどりに輝いていた。柚子、梅、カリン、ルバーブ、林檎にアンズ。聞けばどれもチチさんの手作りだと、悟飯さんは言った。
「どれもみんな美味しいけど、風邪にはカリンがよく効くんだ。俺、あったかい紅茶にこれ入れて飲むの好きだったんだ」
 母と息子の和解はまだまだ先かもしれないが…この分なら時間が解決してくれるやもしれない。今度の正月には悟飯さんを里帰りさせよう。それが良い。


 ———あの『記憶喪失』は、何が原因だったのだろう。それは永遠の謎だ。

 あれから悟飯さんは頭痛も起こさずにいるし、これまでの憂い顔も無く、どちらかといえば以前よりも無邪気になった気もする。言いたい事はずけずけ言うし説教めいたきつい口調は健在ではあったが、前のように「なんでもない」と言う回数は、減った。
「仕事仕事って言うけど、俺と仕事、どっちが大事なんだよ」
 そう言って拗ねてみせたり、時には激しい口喧嘩もしてくるけど…黙って身を引かれて本音も聞けないままってのだけは無い。
『もう終わりにしよう』
『俺はキミの為にならない』
 この口癖もすっかり消えて、代わりに彼が言い出すようになった台詞。仕事がままならなくて家に持ち帰ってキーボードを叩いてやり取りをしていると、音もたてず、そっと入室してくる悟飯さんはこう囁くのだ。

『邪魔しないから、此処にいていい?』

 オレは首を縦に振り、指でOKサインを出す。すっかり定位置となったオレの部屋のソファーに腰掛け、悟飯さんは静かに本を読む。それだけの事だ。寂しいんですか? と問えば、悟飯さんは頬を赤らめ「うん」とだけ、返す。
 たったそれだけの事で、更に愛おしさが募る。元が真面目で照れ屋な彼はひたすら抵抗をするが、大抵オレは仕事を止めて、ソファーで愛を確かめあう。
 そんな翌日、最近悟飯さんの口癖となった台詞がこれだ。

『あのなトランクス…』

 出社前、玄関先でネクタイを整えているオレに、彼はもごもごと言い出しにくそうに顔を背けてから次の句を述べる。

 



『好きだぞ、トランクス』






 END. 



終わりました!お付き合いいただき有難うございました〜!!
色々オチも弱いし、在り来たりですみませんです。でも書いてる側は楽しかったです…♪

しかし最近思うのは、絵が描けたら良かったなぁと常々。描けたらマンガでコレやりたかったなぁ。脳内ではマンガで構成されてたのを文章におこすのは無理だった…!!
だ、誰かコレマンガにして下さい…いや内容が薄いからダメだ…忘れて下さい…(死)!!

また何か書きたくなったらつらつらアップするかもですv その時はヨロシクです…!
by synthetia | 2014-09-07 17:30 | 駄文 | Comments(0)