人気ブログランキング | 話題のタグを見る

高宮あきと云う奴によるDBトラ飯ブログです。pixiv(9164777)もやってます♪主に女性向けなので、嫌悪感じる方はご遠慮下さい(汗)。


by synthetia

トラ飯短編(※ついったでの合作)

お久し振りです。高宮です!
ここしばらく更新無かったんで、久し振りに駄文をアップしようかと😅
ちなみにこのラクガキはついったでアップしていたものです〜✨

トラ飯短編(※ついったでの合作)_e0124559_11415409.jpg

内容は、今年一月あたりについったにて相互さまからいただいたトラちゃんイラストを元にして書いた、未来トラ飯駄文です🎵
ではでは短めのSSをどうぞ!

↓   ↓   ↓   ↓




フィフティ・フィフティ





「悟飯さん、何かお困りの点はありませんか」

 師父や仲間の命を奪った宿敵との闘いに破れ、十数年前に命を落とした筈だったのを故あって現世に強制送還(!)させられた孫 悟飯はこの頃、軽い憂鬱を抱いている。それがこの弟子の存在だ。
「困った事あったらなんでもオレに言ってくださいね」
 もうなんだって良いんです。だっていきなり十数年のブランクある状態で戻ってこられたんですし戸惑わない筈ないですから―――と言い寄られるも、その面はかつてのちいさな少年ではなく…己より数歳年上の立派な青年なのである。常に見下ろしていた目線も今やほぼ同等の位置にあり、お蔭で肩もこらない。
 だが妙な居心地の悪さがあるとすれば、それはこの弟子もひとつの要因となるのは悟飯自身、自ずと気付いてはいた。
 自然と汗ばむ掌をぐっと握りしめ、ニコニコ顔の愛弟子へと目線を向ければ其処には馴染みある青い眼差しが煌めいている。その表情、抑揚の付け方やアクセントも記憶のままなのに時は残酷にも『現実』を示しているものなのだなと、悟飯は溜息をついた。
「…あのな。ほら、今日だってこうして休息をとっているし、問題のありようが無い。そんなに俺に構わなくても、大丈夫だから」
 俺よりも過去から来ている皆さんのご様子を心配する方が先だろう、と悟飯が低く囁けば、愛弟子は「まぁ、そうですけど」と目を細めてこちらを見やるものだから何故か全身がかっと熱くなった。

「ねぇ、悟飯さん」
 ―――貴方と一緒にいられて嬉しいんですよ。

 だからつい構ってしまうんです、と、穏やかな笑みを浮かべつつも涼やかな光を弾く相手の立ち居振る舞いに一層、焦りを覚えてしまう。だが狼狽えを悟られたくなくて背筋を伸ばし居住まいを正すと、悟飯は「そうか、」とのみ返す。これ以上共にいると薄い膜の中にある本来の自分を暴かれてしまいそうで、尚の事、ぶっきらぼうな態度でしか接するしかない己に嫌気がさすのだが、トランクスは動じる風でもなく「あ、そうだ」と、左手に持っていたタブレット———ではなく、良く見ると焦茶の箱であるそれを、悟飯に手渡した。

「これ、宜しければ」

 ほんの僅か、少年だった頃の面影を残した表情で「開けてみて」と歯を出し笑うトランクスにつられ箱の中身を見ると、色とりどりのチョコレートが数粒。
 なんだこれは俺は子供でもないし第一男だ、と身を乗り出しかけた悟飯だが、実は昔から甘いものが好物でもある。もっとも、人造人間との闘いに身を投じるようになってからは極力口にしていなかったのではあるが。
《より強靭な精神と、肉体を。勇ましくあれ》
 あの悟空の代わりとして強く逞しく生きるのにあたって、己の好みやしたい事など二の次ですらなく、常に気を張って生き続けた半生である。
 だがこうして生き返った先で、とうの昔に弟子が悲願を達成し、おまけにこの自分よりも遥かに上位の力を手にしたもうひとりの『孫 悟飯』までいるのだから更に、居心地が悪い。
 おまけにこっちの方が年長者であるというのに、過去世界から助力してくれる少年の悟飯にさえも気を遣わせる始末だ。…これでもし役立たなかったら、それこそ現世に甦った意味など有って無きものでしかない。

 ―――俺は、勇ましくなくては。

 そう思うのに、
「…美味しそうだな」
 気が付けば不意にそんな台詞を口走ってしまい、つられて鳴ってしまう己の胃袋の音に、悟飯は耳まで火照らせる。緑、ピンク、オレンジのつややかな砂糖衣に包まれた嗜好品が悟飯の持つ箱の中で、カタカタと揺れた。また一段階、頬がカッと燃える。
 …だが、そんな師の様子を笑い飛ばすでもなく、終始トランクスはにこやかではあるが真摯な態度は変えず「では試しに一粒どうぞ」と、摘み取った橙色のチョコレートをひとつ、悟飯の口元へと運んだ。とろりと滑らかな口どけと柑橘系の香味がほとばしる。
 チョコレートは、ミルクか苺味しかないという概念を一気にかき消され、替わりに訪れた好奇心と食への欲求が悟飯の口と指を動かしていく。ピスタチオとヘーゼルナッツのフレーバーに感嘆の溜息をついて漸く、手を止める。気付けば箱にあった半分を胃に収めたようだ。

 ―――こんな高価な品どうしたんだ?

 と問えばトランクスはきょとんとした顔をするが、ああと眉をひそめると「別に高価なものではないですよ」と、少しだけ哀しげな目で師匠を見やる。
 ただリビングに置いてあったのを手繰り寄せて持ってきただけだ。悟飯は常日頃気を張って過ごしているのだから、たまには心から休息をとってもらいたい。その手伝いになれば…と思っていただけである。
《オレは貴方にもっと、沢山のものを与えたい…》
 物心ついた時分から傍にいてくれて、絶えず襲い来る危機から自分達母子を守り続け、本来の歳に見合った振る舞いも、やりたかったであろう事も全て忘れ、ただ闘いに投じるだけとなった彼の空洞を埋めてあげたいと切実に願う。
 悟飯は自ら願い出るタイプではない。だからこそ、こうしてトランクスから出向き、彼が望むものや憂いを無くしてあげたいと奔走するのである。
 こんなチョコレートの箱ひとつで悟飯本来の『表情』を得られるのならば、なんと安い代価だろうか。いや、殻はまだまだ分厚い。完全に取り去るにはかなりの年月が必要になるだろう。しかしそれでも、今度は取り残される事なく、悟飯の隣に何時だって寄り添いたいのだ。どんな形であったとしても。

「トランクス、これ…」

 ―――せっかくだから、皆で一緒に食べたいな。

 本来は人が好きで寂しがりやの一面を持つ、そんな悟飯の提案に「とうさん以外は乗ってくれそうですね」と、弟子は肩をすくめる。
「ごめんな。結構、食べちゃったけど」
「いえ、大丈夫ですよ。同じのまだ沢山ありますし、丁度珈琲の豆も取り寄せたところだ。そうですね、皆さんを呼んでコーヒーブレイクといきましょう」
「ちいさな子達にはホットケーキも良いかもな。俺、焼いてくる」
「あ、悟飯さんの美味しいんだよな。オレも食べたいです」
「…仕方がないな」
 じゃあ多めに焼いて待ってるよ、と微笑む悟飯の表情には翳りもてらいも無く、ここ数日隔てていた壁が少し薄くなった。そんな気がした。

 ねえ、悟飯さん。
 オレは———また貴方と一緒にいられて嬉しいんです。

 だから構い続けますよ。

 今度こそ、共に生きる為に。





 END.


【書いた感想】
ふぉろわ様からいただいた可愛いトラちゃん絵では
「あなたと一緒にいられて嬉しいです、これ、もしよろしければ」と
箱を差し出していた構図だったので、ならば…と
チョコレートを題材にしたのが1月半ばだった気が。
イラストいただいてコラボ…というのが初めてだったので
凄く嬉しかったです!! またやりたい🎵


↓にゃさき様から頂いたトラちゃんです(※掲載許可、いただいております)↓
この穢れなき感じが可愛過ぎる…💕
トラ飯短編(※ついったでの合作)_e0124559_12140665.jpg





ついでに高宮作:バレンタインイラストをどうぞ。もう3月ですけどね!はっははは!


トラ飯短編(※ついったでの合作)_e0124559_11420426.jpg

by synthetia | 2021-03-06 11:56 | (主にトラ×飯)駄文 | Comments(0)